離れても共に

□2.14
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そして──取り戻した日常には、足りない人がいる日々を送る。


日中は相変わらず、チョコがどうだの、誰にどの大きさをあげただので騒々しかったが……流石に夜になると静かになった。


──渡す相手がいない包みを手に、城壁をのぼる。


きっとディラン達にバレたら危険だからと怒られるだろう。


「自分で食べちゃうからね〜」


小さく呟いた。






ひょいと持ち上がる包み


「勝手に食うなってハナシ」



月夜に照らされても──フードの下の顔は見えない。

だけど聞き覚えのあるその声で、誰かはすぐに分かっていた。

「誰もブライグのとは言ってないよ」
「じゃあ違うんだな?」
「……違わないけど」


座る彼女の横にかがみ、隣同士で街を眺める──。


「元気か」
「うん」



隣にいるだけで、無言


かえって──何を話せばいいか分からなくて、そうなってしまう。

困っていると、こつりと彼女の頭がもたれてきて……心地よい体温。


言葉は交わさず、しばらくそうして時を過ごした──。





END.





丁度バレンタインでしたね
渡す相手がいない話を書きたくて出来ました
もちっと甘いオチ欲しいな!

今回遠距離恋愛してるみたいな感じですね

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