†リク小説†
□見えない貴方に
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『殿下』
もう一度、その声で呼ばれたい。
『…私の顔に、何か?』
もう一度貴方の顔が見たい。
『…愛しています』
もう一度、貴方のその言葉が聞きたい。
だけど貴方は、もう隣にはいない。
呼びかけても、答えてくれない。
隣に、いない。
ただ、それだけなのに、こんなに辛いだなんて―――
『…殿下を頼む』
そう言っていたとバッシュが私に告げたのは、いつだったか。
何故あの時、連れて来なかったのだろうか。
何故あの時、話をしなかったのだろうか。
何故、あの時――
思い浮かぶのは、貴方の事ばかり。
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