ノンの妄想部屋

□あした目覚めて
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あした目覚めて


「あした目覚めて
われは問う、
「恋しき人はこの日
来るか」と。
夕べ気落ちして
我は嘆く
「かの人は
今日も来たらず」

憂いの故に
夜半(よわ)も眠らず
真昼もなかば
夢見心地に
あてどなく
われはさまよう……
ああ……僕は死にそうだよ…」


何朝から詩なんか読んでるんですか師匠…。マルクルはたまについていけないなと思うときがあるが、今日のハウルはとくに酷かった。以前の彼なら緑のネバネバに埋もれてたんじゃないかと思う。
「今日のハウルはいままでで一番おかしいぜ…大丈夫か?」
カルシファーも珍しく心配している。


当の本人は、暖炉の前に座り、めちゃめちゃへこんでいた。

それもその筈…今日はなにを隠そうホワイトデー。

おかえしをあげなきゃいけない。

ちなみにもらったチョコは数しれない。つまりはそれだけたくさんの女の子にお返ししなくてはならない。
彼の場合魔法でやってしまったのでその点は問題なかった。

けれども。
最重要な本命に、何をあげるか決まらぬまま今日を迎えてしまった。

たいへんに不味い。

くだんの本命さんは、早朝から仕事に行って家にはいなかった。

「あぁーっ!!決まらないっ!!!」

思いきり叫んだためマルクルは萎縮してしまう。

がっくりと首をうなだれていたハウルはボソリとカルシファーに言った。

「風呂にお湯…」
「大丈夫か?」
「…うん」

ハウルは二階へ上がっていく。

「大丈夫なわけないですね」
マルクルはつぶやいた。
「だな」
カルシファーも溜め息をついた。


やがて風呂から様々な物音が聞こえてきた。


一時間後、



「ちょっと出かけてくる、留守番頼んだよ、マルクル、カルシファー」

いつもの黒い印に変えると、ハウルの姿は扉の向こうへかき消えた。



入れ替わりにソフィが帰ってきた。
「ただいま…あら?ハウルは?」
「ハウルさんは今でかけられました」
あらまあそれは残念ね、とソフィはいって、すぐにお昼の支度をするわねと台所へいってしまった。

「なんか…哀れだなハウル」
「そうですね…」
男二人(?)はしみじみと頷く。
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