ノンの妄想部屋

□桜の木の下には
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桜の木の下には…






貴女は知らないかもしれない。
あの美しい、可憐な花びらの中に潜むものを。




久しぶりの地球だった。
リリーナ・ドーリアンは次回の外交官の仕事に向かう前に母に会いに来ている。
この機を逃せば、しばらく母に会う機会はないだろう。
そう思って思いきってスケジュールを調整したのだ。
最初は皆反対した。
なにしろ彼女はトップクラスのVIPだ。それだけSPのレベルも高くなくてはならない。プライベートな時間も確かに必要だと思うのだが、彼女の場合は簡単に動かれても困るといわれ、彼女自身も諦めかけたとき。
くだんのひとが火星から帰ってきた。

「俺が行こう」
「ヒイロ!?」
彼には何時も驚かされる。
気が付くと先々を読んで彼女の前に姿をあらわすから…。
本当は嬉しいのだけれど、彼女は素直になれない。
彼にも大切な仕事があると分かっているから、甘えてはいけないと思うのだ。
「大丈夫なの?向こうでプロジェクトの方が忙しいと…」
「気にするな。行こう」

そんなわけで、二人は彼女の母の家に向かっている。
リムジンに揺られて、二人は黙っている。
最初に口を開いたのはリリーナだった。
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