Tales of The KING
□The First 畏れよ
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「畏れよ! 我を畏れよ! 無力なる咎人たちよ! 我は絶対にして唯一なるもの……神の座に名を連ねる混沌≠フ主よ。さぁ、その短き命を散らすがよい!」
生きとし生ける全ての物に与えられた、死の宣告。代々神職を生業としてきた家計は悉く生贄として捧げられ、万人の意志が一つに纏まりつつあった。
畏れよ、神の名を。
探せ、神子の者を。
如月麗と名付けられた存在もまた、神に仕える家に生まれ育っていたものだった。日本最後の生贄。それが如月家。
「子供たちだけはどうか助けて下さい……!」
「どうかお願いします……」
掠れる様な懇願も、連中の耳に届いたのかどうか分からぬまま二人は逝った。とても強い人だった。
父は常に気高く、強く、母は常に優しく時には厳しく見守ってくれていた。
麗の両親は強かった。本当に、強かった。
世界に蔓延り始めた異形を討つことに長け、戦場では最前線に立つ夫婦だった。
その強さは神にも届いたのか、生贄されて数週間、ありとあらゆる災害が消えた。
狂喜する世界の民は、二人を英雄と称えその全ての技術を伝承された三人の子供を奪い合った。
一人は男、二人は姉妹。
成人にも至らぬ年でありながら、父母と同じように前線に立てる実力、家族であるが故の団結力と連携。世界最強の名に相応しい三人だった。
―――だからこそ悲劇は起こったのだ。
世界が平和を取り戻してから僅かひと月。世界は再び暗黒に包まれた。民の意見は一つ。英雄の子供を捧げよ。
逃げる逃げる三人の子供。追うは世界の民にして世界そのもの。
迷いの森と化した樹海に身を潜ませ、生活の為に盗みを働く、木を伐り小屋を作り上げ異形を研究し、食べた。生きる為になんだってした。
久方ぶりの幸福な時間。噛み締め、涙を見せる姉妹を守る為に少年は命を懸ける。
走る走る祭壇を壊さんと。もがくもがく生きるために。疾る疾る銀の煌めき。幾度にも渡る世界との攻防戦。
何度目かも分からぬ戦を終え森に帰ればそこは火の海。連れ出された姉妹を盾にされ、少年も捕まり地獄が始まった。