駄文

□Godeess Juno's holiday.
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恋次が六番隊舍に向かっている頃白哉は普段以上の仏頂面で執務をこなしていた。
…とは云っても彼のことを良く知らない者には分かる筈もなく周りはバレンタインで浮かれている者が居ると云うこと以外は普段の通りだ。
彼が普段の数段機嫌が悪いのには理由がある。其れは勿論今日と云う日がバレンタインであることは間違いない。
彼は自分が甘味を嫌って居るのは周知の事実であるのに多くの者がチョコレートやらクッキーやら甘味を渡して来ることが理解出来ない。例え其れがバレンタインと云う行事であったとしても、だ。
これ以上甘味を貰ったとしても白哉が食べられる訳も無いし、どうせ胡麻を擂りにやって来る連中が大半であるからそうしたことを配慮し、浮かれることも無く普段通りに行動している恋次にとても助けられていた。



「うわー隊長、俺が居ない間にまた増えました?」
書類を届けに行っていた…実際は一護の所へ行っていたのだが…恋次は戻って来ると隊首室に山積みになっている贈り物を見て閉口した。
「…云うな、見たくもない」
「ですよねー…」
白哉は書類からつと目を恋次へ向けると眉間に皺を寄せた。
「…恋次」
「はい?」
「その荷物はなんだ」
「………貰い物?」
「疑問形で返すな」
白哉が眉間に皺を寄せた理由はたかが書類を届けて帰ってきただけだと云うのに恋次は両腕一杯に誰其れからの贈り物を抱えて立って居たのだ。
「…至る所で話し掛けられてこれ渡されて…俺のもあれば隊長に渡してくれって云うのもあって…」
「………」
白哉はとてつもなく不機嫌そうに恋次を睨み付け、其の刺すような視線に恋次は思わず目を泳がせる。
「いらないって断ったんすけど…どうしてもって云われて強引に押し付けられて…」
「その状態に至ると?」
「ええ…まぁ…」
不機嫌な白哉に対して彼は弱々しく頷くことしか出来なかった。そんな恋次を見て白哉は溜め息を吐き云う。
「…お前の物と私の物を別けておけ…其れ等をどうするかを考えるのは後だ」
「…はい」
恋次はしょんぼりと項垂れて白哉に云い付けられたまま、自分が貰った物と白哉が貰った物とを別け始めた。
因みに恋次が彼への贈り物を届けて欲しいと云われた時の衝撃はとてつも無いものであった。
自分は彼になかなか、と云うよりか白哉は己の欲する物は自身で手に入れてしまう為に…何せ四大貴族である朽木家当主だ…贈り物をする機会は先ず無い。だが、女性である彼女達は自分と違ってこのバレンタインと云う機会を利用して贈り物が出来る…況してや其れが彼の嫌いな甘味であってもだ…彼にとって羨ましいことこの上無い。
なので恋次は白哉への贈り物を頼まれた折「隊長は甘味が嫌いだから」と云い断りを申し出たのだ。理由は彼をこれ以上困らせたくないと云うことともう一つ。
彼に贈り物が出来ると云う嫉妬心からだ。…とは云え恋次は意地悪になりきれない所があり、結局は受け取ってしまったのではあるが。
と、恋次が悩む一方白哉は白哉で恋次が贈り物を貰い受けて来たと云うことが気に入らなかった。
彼はバレンタインに無関心であるし関わる気は更々無いが、知っては居る。其のため恋次に好意を持って居る者が多く居るのを知らされるのは幾ら互いが恋仲であると云う自負はあれど不快なことは違いなかった。
そうしてお互い胸の底に云い様の無い不快感を抱えながら黙々と執務をこなしていく。



幾ばくか経った頃に恋次が茶を煎れて来ると云って隊首室から出たのと入れ違いに珍客が現れた。
「よう白哉、元気にしてるか?」
其れは死神代行黒崎一護であった。
「…何の用だ…」
只でさえあまり機嫌の宜しく無い白哉は苛立ちも隠さず目の前の珍客を睨み付けた。
「そんな怖い顔して睨むなよ…」
一護は肩を竦めて白哉の方へと近づくと彼の前に小さな箱を置いた。彼は其の箱を見、今日其れが何を意図するのかを思い浮かべて益々不快な顔をした。
「…よもや貴様までもがバレンタインと云う名の奇行に…」
「違う違う、誰がお前にプレゼントしてやらなきゃなんねぇんだよ気持ちわりぃな」
一護も今の一連の動作が示す一般的な解釈を思い不快に思ったので其れを打ち消す様に声を発する。
「これは恋次からだよ」
「恋次が…?だとすれば直接渡す機会等副官である奴には山程あるでは無いか」
渡したいのならば回りくどいことはせずに直接渡せば良いのにと思った白哉は首を傾げる。
「俺があいつから貰ったんだよ、お前に渡せないからってな」
「…何故恋次が兄に渡しそして私に渡される意味が分からぬのだが」
「あー…ホントにあいつはこそこそと頑張ってた訳ね」
一護は恋次が慎重と云う言葉から一番遠い存在だと云う認識を撤回することにした。どうやら白哉やルキアが関わることとなると全力を尽くす様だ、と思うと同時に普段どれだけ迷惑を掛けられのろけを聞かされ見せ付けられていると云う結論にたどり着き頭が痛くなった。

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