駄文

□Godeess Juno's holiday.
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一護は頭を抱えたい衝動に駆られたが辛うじて抑え込み白哉に此処までの経緯を話すことにした。
「恋次がお前にこいつを渡そうと思ってたらしいんだけど…お前かなり色んな奴からチョコ貰ってね?」
「…見れば分かるだろう」
一護は隊首室に積んである箱を見て理解をし、白哉は見たくも無いと云わんばかりに箱を視界に入れない様にしていた。
「それで恋次の奴お前にこれを渡して嫌われんのヤだから俺にくれた訳」
「…ならば兄が此処に来る理由は無かろう」
「そうだけど、恋次が白哉の為にとか云ってたからかなり頑張ってたみたいだぜ?…俺がそんな大事なもん貰って良い訳ねぇだろ?」
「………」
そう、一護に問われた白哉は複雑な心境である。確かに、恋次からの贈り物は嬉しい。だが、恋次は他の女達と同じと思われるのを嫌い一護に其れを渡したのである…しかも己には黙ったままで。
「じゃ、俺は返すもん返したなら帰るわ」
「…此のまま帰るつもりか貴様…」
「当然だろ、だって…」
一護は普段の仏頂面から一転爽やかな笑顔で。
「お前等ムカつくから嫌がらせ」
と云って去って行った。日々白哉と恋次に見せ付けられている一護からの…寂しい独り身から大きなお世話と云う名の嫌がらせである。
「………」
白哉は一護の置き土産を睨み此れからどうしたものかと考え始めた。



恋次は隊首室に戻って来た時に目を疑った。理由は白哉の机上に置いてある小さな箱だ。其の箱は間違いなく己が一護に渡した…白哉に渡す筈であった箱だった。
そして其の机で白哉は黙々と執務をこなしていると云う全く理解出来ない状況である。
聞きたいことがあるのなら後で聞いても相違無いと思い兎に角何が何だかさっぱり訳の分からない状況であるが恋次は忠犬宜しく白哉に頼まれて居た茶を渡すことにした。
「隊長」
恋次は白哉に一声掛けてから茶を置いた。
「ああ」
彼は手を止め恋次を見る。
「恋次」
恋次はじっと自分の目を見て名を呼んで来る普段から綺麗な白哉の瞳にみとれそうになったが其れを振り払い返事をした。
「はい」
「お前は此の小箱に見覚えはあるか」
いきなり問われ答え難いが故に恋次が黙り込んでしまうと白哉はもう一度恋次に問うた。
「お前は此れを知っているか」
少し厳しい口調で問われた恋次はつい、小さく頷いてしまった。
「…隊長、それ…どうして…」
「黒崎一護が置いて行ったのだ」
「一護が…」
一護が持って来たと聞いて一護がお節介をやいたと考えればのでなんとなくの理解は出来る。用は一護が恋次が渡すのを諦めた其れを本人に渡してしまったのである。
「(あの野郎…!!)」
恋次は予想外すぎる展開にただ狼狽することしか出来なかった。そして彼は次に会う機会があったら絶対に最低一発はあのオレンジ頭をブン殴ってやろうと心に決めた。
「…恋次」
「はい」
「何故私に此れを渡そうと思った」
「…バレンタインで、隊長には何時も世話になってるし、たまにしか隊長になんかしてあげられることなんて、ないから…」
「では、何故其れを止め黒崎一護に渡した」
「…止めたのは、元から隊長が甘味が嫌いなのを知ってたし、他の奴らから沢山貰ってて迷惑だと思ったから、一護にそれをやったのはあいつがチョコが好きだって覚えてたから…です」
白哉の淡々とした質問を聞く度に恋次は不安になる。
「何故、黙っていた」
「隊長に、迷惑かけたく無いのとちょっと驚かそうと思ってた、から…」
暫く白哉は考えるかの様に黙り込むと恋次の名を呼んだ。
恋次は今、名を呼ばれ、白哉がとてつも無く機嫌が悪いだろうと思って居た。恋次は彼が勝手に贈り物をしようとし、更に其れを断念した上で其れを一護に渡して居るのだ…しかも白哉には全て秘密である。こんな馬鹿げたことをして、己を煩わせた存在として、とても失望されて居るのでは無いかと恋次は不安で堪らなかった。
「此れは、私が貰うと云うことで相違無いか」
「はい…」
だが、白哉が発した言葉はそんな予想とは全く違うものであった。
「確かに此れは貰い受けた。感謝するぞ、恋次」
感謝と云う言葉を聞いて恋次は驚いて顔を上げる。
「今…なん…っ」
「…感謝する、と云ったのだが…」
白哉は驚く恋次の様子を見て優しげに目を細めていた。対して恋次は全く理解が出来ないらしくただ目を見開いていた。
「物を貰った時にはこうして礼を云うのが筋であろう。お前からであれば尚更だ」
「な、なん、で…」
普段は言葉足らずな白哉の云っていること、思っていることが何と無く分かると自負している恋次だがこの時ばかりは何が何だかさっぱりだった。

「…お前からの贈り物を私が疎ましく思う訳が無かろう」

白哉はそう呟くと小さく微笑んだ。

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