長編駄文

□滝桜
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何故


こんなにも心動かされるのだろう


高揚感と不安感がない交ぜになった様な


嬉しさと切なさが入り交じった様な


こんな想いを感じて居たのは


何時のことだっただろうか




『滝桜』




毎日は、繰り返しの映像だった―。




先日、白哉は恋次に誘われて食事をした。それは彼にとって不思議な感覚だった。
恋次は"独りでする食事よりも誰かとする食事の方が美味しい"と幾度も白哉に云った。
白哉は特別食に関して煩く無い、と云うよりは自身の邸の食事が一流であり、その他の処で食事をする機会も無く美味か否かを気に掛ける様な環境に居ないせいもある。
意外なことも在るもので久しく家柄の関係でもなく、貴族の関係でも何でもない者と、しかも外で食事をすることなど殆んど在りはしない。
その様な場合白哉は何かあってはならないと教え込まれていてあまり手をつけることもない。
それ故、下手をすれば初めてと感じてしまうくらい本当に久しく気を許した相手と食事をしたのでは無いかと白哉は思った。

そこまで考えた時隊首室の戸が開き今では聞き慣れた声が聞こえてきた。

「隊長ー、云われてた書類貰って来ましたよー」

白哉が戸の方に目をやるとそこには山程の書類を抱えた恋次がいた。

「ああ、そこに置いておけ」

「はーい」

恋次は返事をして机の上へ書類を置いた。

「あー…重かったぁ」

恋次は大きく息を吐き椅子へ座り込んだ。

「だらしない」

白哉がそういうと恋次は不満そうな顔をした。

「紙って結構重いんですよ、そういうなら隊長が運んで下さいよ」

と云いながら恋次は頬を膨らまし不貞腐れていた。
何処の童だと白哉は呆れつつ恋次を見る。

「私が云いたいのは疲れたのは分かるがもう少ししっかりとした態度で居ろと云うことだ」

白哉が云うと恋次は若干落ち込んだ様子で小さく返事をした。
やはり恋次と居るのは疲れる、と彼は再確認した。
そして、それと同時にここまで他者と関わるのは実に久しいことだと実感した。
ふぅ、と息を吐き書類を片付けようと白哉が筆を手に取ると隊首室の戸が開く。

「失礼します」

入ってきたのは九番隊副隊長檜佐木修兵。

「あ、檜佐木さん!」

恋次は笑顔で檜佐木の元へと駆け寄った。白哉はまるで犬の様だと思った。

「久しぶりっスね!」

「おお、今日も元気そうだなぁ阿散井は」

檜佐木も随分と恋次と親しげにしていた。

「朽木隊長、これ、九番隊からの書類です」

そう云って檜佐木は机の上に書類を置いた。

「ああ…」

白哉は短く返事をして筆を動かし始めた。

「わぁ檜佐木さん副隊長みてぇー」

「副隊長みたいじゃ無くて副隊長なんだよ」

檜佐木はグシャグシャと恋次の頭を乱暴に撫で付けた。

「止めろよもう!檜佐木さんってば!」

「生意気な後輩にはこれくらいのお仕置きが必要なんだよ」

檜佐木はふざけた様子でいぐいと恋次の頭を押さえつける。

「止めろ止めろ!!」

恋次もふざけた様子でじたばたともがいている。
そんなじゃれている二人の姿を見て白哉は何故だか無性に腹が立った。

「…恋次」

「はい?」

「何時までも遊んで居るな」

彼がキツく睨み付けると恋次は俯き「…すみません」と小さな声で呟いた。

「じゃあ俺も失礼します」

檜佐木は見計らった様にそう云い「またな阿散井」と恋次に声を掛けるとそのまま出て云った。

「…恋次」

「はい?」

恋次は白哉にいきなり声を掛けられたことに若干驚いた顔をしながら返事をした。

「檜佐木修兵とは親しいのか?」

二人の様子を見てそう検討をつけた白哉は恋次にそう聞いた。

「あ、はい、瀞霊邸霊術院の先輩で…良く面倒見て貰いました」

「そうか」

「とっても良い先輩で、頼りになるんすよ」

そう云った恋次はとても嬉しそうな笑顔を見せていた。

「…そうか」

何時もなら心が温かくなるような笑顔だったが、その時彼の心には冷たく暗い何かが落ちてきた。


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