長編駄文

□The first breath is the beginning of death.
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夕食の買い出しが終わり、白哉と恋次は手を繋いでまるで兄弟の様に帰り道を歩いている。
すると二人の方へ一人の女性が近寄ってきた。

「おお、久しぶりじゃの白哉坊」

「…夜一」

女性…夜一は朗らかに笑っていたが話しかけられた白哉は嫌そうな顔をしている。
そして恋次は白哉の後ろにそそくさと隠れてしまった。
夜一は小さな頃からの白哉の知り合いだ。
彼女は普通の人間が知らない様なことまで知っている情報通。自称情報屋だ。

「なんじゃ白哉坊、その子供は…弟でも増えたか?ん?」

「…違う」

「可愛いのう、お主名をなんという」

「………」

夜一は優しく話しかけたが恋次は怯えて白哉の後ろで縮こまるだけだった。

「こやつは恋次と云う」

会話が進まないだろうと思った白哉は口を挟んだ。

「ほう、恋次か宜しくな」

夜一が恋次の頭を撫でようとすると恋次はびくりと震えて夜一から離れた。

「…人見知りが激しい上に怖がりなのだ…それ以上は恋次が怯えるから止めろ」

白哉はその様子を見てため息を吐いた後、恋次を抱えて夜一から離れた。

「恋次、そんなに怯えなくともこやつは何もせぬから安心しろ」

「………」

恋次はこくりと小さく頷き了承したが白哉にべったりとくっついたまま離れようとはしない。
夜一はその様子を見て感心している。

「ほほう、あの白哉坊が成長したのう」

うんうんと夜一は一人腕組みをして頷いた。

「なんだ…何か文句でもあるのか…」

「いや…お前がルキア以外の面倒を見るようになるとは思わ無くてのう」

「…で、何の用だ」

大概夜一が会いに来る時はろくなことがないのだと白哉は知っていた。

「世間話でもしようと思ったのにのう…」

夜一は残念そうに溜め息を吐いた。

「最近、ここ周辺で彷徨いとる連中が居るから気を付けろ」

「何に気を付けろ、と」

夜一が気を付けろと云っているのは極道連中のことだろう。
両親の遺産の関係で幾度か狙われた記憶があった。
そしてその度に夜一には世話になっていた。

「理由は知らぬが"赤い髪をした小さな男の子"を探して居るらしい」

「……まさか」

白哉は驚き恋次を見た。

「恋次だと云う確証は無いが…用心に越したことはない」

「………」

「……ごしゅじんさまどうしたの?」

黙っている白哉を抱えられている恋次が心配そうに見た。
恋次には会話の意味がわかっていないらしい。

「ああ、なんでもない、お前には関係のない話だから安心しろ」

白哉はなるべく優しく恋次を安心させる様に云い聞かせた。

「うん」

それを聞いた恋次は安心して素直に頷いた。

「何か気になることがあったら直ぐにあやつの所へ行け」

「…分かった」

そう夜一に云って白哉は恋次を抱え直して夜一に背を向けた。

「さあ、そろそろ帰ろうか恋次」

恋次はこくこくと頷いた。

白哉は何故自分が面倒事に巻き込まれるのか知りたくてしかたがなくなった。


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