駄文

□泣き顔
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瀞霊邸の事件後ルキアが無罪となり、隊長三名が居なくなった後に死神達は事後処理に追われていた。

六番隊副隊長阿散井恋次もその内の一人。

六番隊隊長朽木白哉が負傷し療養中の今、恋次は代わりに沢山の仕事をこなしていた。


「次、その書類は向こう、それはあっち」
「ハイ!」

バタバタと多くの隊士が忙しなく動きまわっていた。

「…俺は、朽木隊長のとこに報告に行って来る」
「わかりました」

隊士の声を背に受けて恋次は白哉の居る病室へと脚を運ぶ。



コンコン、と恋次は白哉の病室の戸を叩く。

「朽木隊長」
「…恋次か」

病室から白哉の低くて良く通る声が聞こえてきた。

「ハイ」
「入れ」
「失礼します」

ガラッと恋次は戸を開け、病室へ入る。

「何の用だ」

白哉はベッドから身を起こし恋次を見る。

「…今日の報告です」
「話せ」

白哉はちらと恋次の方を見てそう静かに言った。

「…はい」

恋次は項垂れながら書類を読み上げ始めた。



「……嫌われた…」

恋次は一人トボトボと廊下を歩いている。
(…最近、全然喋ってくんないし、目も合わせてくれないし、なんかちょっと避けられてる感あるし…)
ますます恋次は落ち込む。

「………ゔ〜っ」

とても泣きたくなって来た恋次。

「恋次?」

いきなり後ろから呼ばれて恋次は驚く。

「狽チ、いッ一護ッ!?何だテメェッ!!ビックリすんじゃねぇか!!」
「わりぃわりぃ、驚かすつもりはなかったんだ」

一護もそんなに驚かれるとは思っていなかったらしくバツが悪そうに謝った。

「で?ナンのようだ」

むっとしながら恋次は一護に聞く。

「ん?なんか落ち込んで見えたから、どーかしたのかと思ってさ」
「はァ?落ち込んでねェし」
「そう見えたからいってんだろ?そんな泣きそうな顔しやがって」

図星の恋次は一瞬怯んだがそれを否定する。

「…ありえねぇし、つーか俺は忙しんだ!どっか行け!」
「あ゙ああッ!!だったらなんでそんな顔してんだ!!」

そう言って一護は恋次の柔らかい頬を軽くつねる。

「狽ヘっ、はなひぇっ!!」

恋次はビックリしながら必死でそれを取ろうともがくが

「いやだね」

そう返事をしつつ一護は指に少し力を入れる。

「いひゃい!!」

よっぽど痛いのか恋次の瞳には涙が浮かんできた。

「い、いひゃいっ…!いひゃいからっ!はなひぇっ!!」

一護も流石に気の毒だと思ったのかパッと手を離した。

「〜っゔ〜〜…
ナニしやがるッッ!!」

恋次はヒリヒリと痛む頬を擦りながら一護を睨み付ける。

「泣きそうだろ?」

ニヤニヤと笑いながら一護は言った。

「テメェのせーだろッ!!」

まだ痛むのか目を潤ませつつ、未だに朱に染まった頬をしたまま一護を怒鳴りつける。

「そんな面して怒鳴ったって怖かねーよ」

ニヤニヤと恋次を見ながら一護は笑う。

「…んだとこらぁっ!!」

むーっ!!と恋次はふてくされた顔をしてそっぽを向いてしまった。

「…んー、なぁ、恋次?」
「んだよ」
「お前さぁ、自分が考えてることすぐ顔に出るってこと知ってるか?」
「…隊長にはよくいわれる」
「ふーん、やっぱな」
「だったらなンだよ!!」
「いや、たださ……
…なんかあったら言えよ?話くらいは聞くからさ」
「………」

恋次は驚いた顔をして一護を見た後に少々恥ずかし気に笑いながら「サンキュ」と言い一護に背を向けて走り去って行った。

「………」

一護は呆然と立ち尽くし、暫くして深いため息を吐いた。

「……あんなん反則だ…」

そう小さく呟いて一護はガックリと肩を落とした。



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