長編駄文
□afraid of his own shadow
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同じ冬の日であるにも関わらずその日の空はどんよりとしたねずみ色をしていた。
白哉はその日のバイトを終え、帰宅途中だった。
白哉はルキアと二人で暮らしている。
両親は既に病で亡くなっており、祖父の世話になって居たがそれも長くは続かず祖父は少し前に亡くなった。
だがそれでも白哉とルキアに両親は多くの遺産を遺しており白哉は大学へ、ルキアは小学生へと通うことが出来ている。
それも何時まで続くか分からない為白哉は大学へ通いながら沢山のバイトを入れて働きながら通って居るのだ。
「今日は冷えるな…」
遅い時間になってしまった。…いつも白哉が帰宅するまで寝ようとしないルキアはまだ起きて居るのだろう。
そんなことをぼんやりと考えながら白哉は歩いていた。
すると後ろからなにやら音がしたような気がした白哉は振り返った。
後ろに居たのは小さな子供だった。先ず目に付いたのは暗がりでも分かる鮮やかな赤い長い髪。
それから冬であるというのに靴も履かず、ボロボロの服であること。
子供は妹のルキアと同じくらいの歳に見えた。
迷子だろうかとも思ったがそれにしてはおかしな点が多すぎる。
「………」
その子供はじっと白哉を見て何やら云っている。
「…ごしゅじんさま」
子供は確かにそう云った。
「…何?」
白哉はそれを聞いて何を云っているのかが分からず白哉は子供を見た。
「ごしゅじんさま」
子供はゆっくり白哉の目の前へやってきた。
そこで白哉はその子供が普通の子供と決定的に違う所を見つけた。
首輪を着けていたことと、子供の髪と同じ赤い色をした大きい犬のような耳と尻尾がついていた。
その耳と尻尾はへたりと元気無く垂れていた。
「…誰が…お前の主人だと?」
「ごしゅじんさま」
子供は"ごしゅじんさま"を連呼している。
白哉はあまり関わり会いたく無かった。だが、寒さの為か小刻みに震えているルキアと同じくらいの子供を放って置くわけにもいかなかった。
「…貴様、名は?」
「…れんじ」
「………ついて来い」
恋次はこくりと頷いて白哉の後ろをついてきた。
恋次を家へと連れて帰った白哉は先ず寒さで震えている恋次を風呂に入れてやろうと思った。