お題

□愛してるから壊したい10題
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3.もっと傷ついてよ

白恋←千(シリアス



俺は、何時もお前を…お前だけを見ているのに。
何故、こっちを向いてくれないんだ。



俺は恋次の前に立ちはだかり白哉に手出し出来ないようにする。

「何で、あんたはそいつらと居るんすか!朽木隊長!」

恋次は歯をくいしばり悔しそうに叫ぶ。

「…これ以上、お前たちは関わるな」

「どうしてっすか!理由も分からずに引き下がれねぇよ!」

恋次は尚白哉を睨み付け、吠える。

「…私の正義を貫く為だ」

白哉は静かにそう云った。その声には分かり難いが幾分かの悲しみが入り交じっていた。
俺は理由を知り、協力する側だ。しかし恋次は理由も分からないまま、裏切られた側だ。
普段の時ならば感じ取ることが出来ただろうが今はそれを感じ取ることは出来ていないだろう。

「白哉、先に行け」

俺が云うとちらと恋次を見た後に、小さく頷き白哉は瞬歩で姿を消した。

「……朽木、隊長…」

小さく呟く恋次は酷く悔しそうで、苦しそうで、辛そうで仕方なかった。
嗚呼、今にも泣きそうな顔をして…。

「そんなに悲しいか」

「…お前に何が分かる」

きっ、と俺を睨み付けるその目には怒りが見える。その怒りの矛先は多分、俺だろう。

「そんなに何を怒る」

「怒ってるだけじゃねぇよ」

ますます怒りを濃くしていく恋次が俺を見ている。

俺はそれがただ、嬉しい。

今お前のその瞳に映るのは、俺。

お前の怒りと悲しみの想いを抱かせているのは、俺。

今恋次が見ているのは白哉ではない。

恋次が想っているのは白哉ではない。

他の誰でもなく、俺だ。



「先も云った通り、お前は関わるな」

「何でだよ」

「お前には関係がないからな」

「………」

恋次は悔しげに唇を噛む。
嗚呼、そんなことをしたら綺麗な唇が切れてしまうではないか。

「恋次」

「…っ!」

俺が白哉がするように名を呼ぶと恋次が困惑した表情を見せる。

「恋次」

「呼ぶな」

白哉に呼ばれているような錯覚をしてしまう自分が嫌なのだろう。

「…恋次」

「だから呼ぶな!」

恋次はそれは酷く傷付いた表情をしていた。
嗚呼、そんな顔をされるともっと傷付けたくなるではないか。

「恋次」

「止めろ!」

そう、もっと傷付いてくれ。
痕が残る程に深く、深く。


そうすればお前は俺を忘れないだろう?


俺は恋次の側へと向かいながら仮面をずらして顔に手を触れて引き寄せる。
そして、強く噛みしめて今にも切れてしまいそうな唇へと口付けた。

口付けが終わって離れた時に俺の愛しい人は、どんな傷付いた顔をしてくれるだろうか…。


END

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