お題

□愛してるから壊したい10題
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4.でもきみは、逃げない

白恋(ほの甘




「恋次」と名を呼べば、


「はい」と返ってくる返事。


「何ですか?」


不思議そうに首を傾げる愛しい者。


「これを十三番隊に届けて来い」


と言って書類を示す。


「わかりました」


恋次はコクリと頷き書類を受け取り十三番隊隊舍の方へと向かって行った。


「…三席」


戸の外に待たせて居た三席を呼ぶ。


「はい」


スッと三席が戸の外から入って来る。


「これを三、九、十番隊へ持って行け」


「…はい………朽木隊長」


「何だ」


「…朽木隊長はそんなに阿散井副隊長を他の隊へ行かせたくないのですか?」


三席はとても心配そうな顔をしながら私に聞いてきた。


「黙れ、お前には関係ない」


「…ですが…これでは書類が滞るばかりですよ」


「ただ単に恋次に好意を寄せている死神と恋次を会わせたくない、というのが理由だが何か?」


「…朽木隊長」


三席は完全に呆れ顔だ。


「何だ」


横目で返事をしてやると


「…もういいです、三番隊に行って来ます」


諦めて書類を届けに行くことにしたようだ。


「ああ」


ガラッと戸の開く音が聞こえたかと思うと


「戻りましたぁー」


と十三番隊から帰ってきた恋次の声が聞こえてきた。


「…うわ、すげぇ量の書類…どこに出すんですか?」


恋次は書類の山を見て驚いた様だ。


「…俺が出しに行きますけど…?」


「よい」


「え、でも…」


大変そうだし…と恋次は呟いた。


「必要ない」


「…はい」


恋次はしゅんとした表情をして項垂れた。


「早く行け」


「はっ」


三席は書類を幾つか持って戸を開けて出て言った。


「…どうして俺は駄目なんスか?」


「…あの書類は三、九、十番隊に持って行くものだからだ」


「…?なんでそーなるんスか隊長…」


「…恋次」


ハァ…と私はため息を吐く。


「はい」


キョトンとした顔で恋次は私を見つめて来た。


「こちらへ来い」


「はい?」


ノコノコと恋次は私の側へやってきた。


「何ですか?」


とても不思議そうに恋次は首を傾げてきた。


その姿が可愛くて私は恋次の腕を引っ張って膝の上に座らせギュッと抱き締めた。


「狽ス、隊長っ!?」


恋次は真っ赤になって慌てる。


「こういうことだ」


「ハァッ!!?何いってんスか!?離して下さいっ!!三席が戻ってきたらどーすんですか!!」


私はフンと鼻で笑い


「見せ付けてやれ」


と言ってやったら。


「フザケンなァァッ!!!何考えてんだアンタ!!」


とかなり必死で逃げようとする…が、私が離す筈もないのでもがいているだけだ。


「…つーか隊長…まさか俺を他の人に会わせたくないだけなんじゃ…」


「だとしたら?」


「ガキですかアンタは…


…で、隊長は俺を誰と会わせたくないんですか?」


「…私以外の全てだ、お前に好意を抱く者には特に近付けたくない」


「…どんだけ独占欲強ぇんだよ…アンタは…」


恋次はかなりの呆れ顔で私を見た。


「お前は私のモノだからな」


「いつ、どこで、誰がんなこといいましたか朽木隊長?」


恋次は心底嫌そうな顔をしていた。


「私が決めた」


私が言い切ると


「ヤですよそんなん…俺、檜佐木さんや日番谷隊長のトコに逃げますよ?」


冗談混じりで恋次はそう言った。


それに私は「全力で追い掛けるまでだ」と答え、捕まえて二度と外になど出してやるものか、と心に決めた。


「…えーっ…じゃあ俺がどんなに頑張ったとしても逃げらんないじゃないですか」


恋次はとても嫌そうな顔をしながらそういった。


「ああ…だが恋次、お前は、逃げると言っていながら随分と大人しいな」


「アンタが離してくんないからだろ」


といって私を睨み付けた。


「…お前は私から離れぬ」


「何があろうと側に居ろ」


「お前は、私から逃げたりはせぬ」


そう耳元で囁くと恋次は


「…わかりましたよ、もう、逃げたりなんかしませんよ」


とくすくすと笑ったので「何が可笑しい」と聞けば


「…ずぅっと側に居ますよ」


にこ、と恋次は優しく微笑んだ。


「それで良い」


「お前は私のモノだ」


「はいはい」


「愛しているぞ恋次」


と言って私は思い切り恋次を抱き締めた。


「…聞き飽きましたよ…俺も大好きですよ、隊長」


と恋次は照れ臭そうに笑いながらそう言った。


「早く愛している、と言える様になれ」


「無理」


と首を横に振る恋次の頭を頭を私が撫でてやると恋次は甘えるように私に寄りかかって来た。









ちょっと前に帰って来ていた三席は白哉と恋次がイチャと仲良く話している姿を見て違う隊に行きたいと心から願ったらしい…。




END

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