暁月夜

□欺き
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「何年やろなァ
ボクがこっちに来るようになって……」







私が酌んだ酒を
珍しく一気に飲み干して貴方は呟いた

百年は経ちましたよ、金婚式二回目過ぎたっスと少しおどけて答えても
いつものような反応はなく、ただ夜空をぼんやりと見上げていた



その瞳はどこか虚ろで…



市丸さん?と声を掛けると
貴方は私の方には振り返らずにそのままの状態で云った







「そか、そない経つんや………そやけど…
変わらへんなァ、浦原さんは……」








そんな事はない








そう云おうとしたが
私はふと口をつぐんでしまった

それは貴方が一瞬だけ、
深く傷ついているような
ひどく哀しげな表情(かお)をしたから………















    欺き














ギンと喜助は身を寄せて縁側に居た





ギンの肩にもたれて安心したように眠る喜助…
そんな彼をギンは穏やかな眼差しで見つめている





そして、喜助の髪を優しく撫でてそっと口付けた
ギンの喜助に対する想いがにじみ出るようなしぐさだった





「こないなトコで寝てもうたら風邪ひくで?」





ギンの声に喜助はうっすらと目を開いてギンに顔を向けると微笑(わら)った


意識は半分も覚醒していなく、瞳はとろんとしている





「もう少しだけ」

「そやから風邪引くて…体も冷たくなっとるし」

「じゃあ市丸さんが温めてください」

「…………」

「ね?市丸さん…」

「………しゃぁないなァ」





ギンはそう云うと喜助を抱く腕に少し力を込めた
二人はしばらくお互い見つめ合っていたが
喜助はまたゆっくりと瞳をとじて眠りに落ちた










――――これで良(え)えんや……人を愛するいうんは










誰も教えてはくれへんかった
人を愛したらどないな風にそれを伝えたらええのか





けど浦原さんはボクに教えてくれた…





愛したら





“ただ優しく微笑むだけでいい”







『ギン……浦原喜助の動向は何かあったかい?』

『はい…やはり崩玉は行方不明の朽木ルキアに隠されたようです』

『それは確かなのか』

『間違いありません』

『そうか……ギン、東仙を喚んでくれ
地下議事堂へ行く』

『はい、藍染隊長』








昨晩、藍染隊長はついに動きだした

四十六室を殺害後、中央地下議事堂全体に鏡花水月をかけはった

今んとこ順調に…これからも全て彼の思惑通りにいくんやろう…






ボクはどないする?






ハハ……答えなぞとうに決まっとる






ボクは浦原さんを護る…
彼のためならどないなことでもするて決めたんや






藍染隊長






貴方の想像を絶するようなことでも……









いっしょに……市…丸…さん

「……寝言……やね」






“来年もこうして……”






浦原さん…






「ごめんな」







君がいるから僕はいる
君の笑顔がいつまでも途絶えることがないように
護る そう決めた






「約束破るつもりはなかってん……」






なぁ浦原さん…


ボクより先に死なせへんよ






Therefore I kiss the hand I wish to cut off...




    §fin§

 

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