□ ホムンクルス
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「丸井先輩!仁王先輩!!」

そう満面の笑みで俺と仁王に駆け寄ってきた赤也。

その右手には大きなクリスタルのフラスコが握られていた。

それを俺達の目の前に突き付けて

「ホムンクルスっスよ!先輩!」

餓鬼みたいにはしゃぐ。

俺と仁王は顔を見合わせてから

「ホムンクルス?」

そう訊いて憫笑した。

赤也は、この頃なんだか不思議な事が気に入っているらしく

魔術・魔法・魔道具・召喚術‥‥

そんな変な本を読んでは楽しそうに語っていた。

だけど、まさか‥‥

ここまでのめり込んでいたとは。

まぁ、人の自由だけどな‥‥

「で?何だよ?ホムンクルス?」

「いいから!ほら!!」

笑いを堪えて蹲る仁王。

俺も笑いを堪えるのに精一杯だ。

そんな俺に赤也は更にフラスコを突き付けてくる。

「そんな近くじゃ見え‥‥」

その中でこちらを見つめる1人の少女。

「ねぇ‥‥って。何だよ、コレ」

「さっきからホムンクルスだって言ってるんスけど?」

当然な顔をして言う赤也。

「ホムンクルスって‥‥」

「ホムンクルスっスよ」

そんなのは分かってんだよ。

それより問題は何でここにそんなモンが居るかってことだ。

だって、ホムンクルスって‥‥

あの、人造人間のことだろぃ?

ホントに造れるモンなのか?

まじまじと俺は、ホムンクルスを見つめる。

「何ですか?」

「ん?」

声がして赤也の顔を見やると

「なんスか?」

逆に質問された。

「お前が『何ですか?』って訊いたんだろぃ?」

「言ってないっスよ」

「は?」

「私です‥‥」

ん?と俺と赤也は同じタイミングでフラスコを見る。

「私です」

ニッコリと綺麗に微笑んだホムンクルス。

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