JR@

□青いきず
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なめて。

そう言って手を差し出した彼を、まるで何のことやらわからずに俺は、ただぽかんと口を開けて見つめ返すしかなかった。



こいつはいつだって全力であり、真剣なのだ。

そんなところだけは、少し尊敬している。



狭い部屋の中は二人が呼吸した二酸化炭素で満たされ、互いが吐き出したそれを再び吸い込み、また吐き出す。

さっきまで随分長いこと、おとなしくそこに座っていたはずなのに、今は骨張った白い手を伸ばして、今にもほどけてしまいそうな頼りない笑みを浮かべて、塗り潰されたような真っ黒の虹彩で、ただただ俺を見つめてくる。

奴の存在は俺を圧迫する。



こいつは何だって俺のところになんか来たんだろう。

気持ちなんて何一つ、わかってあげられやしないのに。

ぴんと伸びたその背中を追っては、いつだって突き落としてやりたい衝動を持て余しているのに。



忠誠でも誓うように捧げ持った長い指は、ひんやりと冷たい。

そのまま引き寄せて、舌先で触れる。

手の甲は指先より幾分温かく、なめらかだった。

促されるままに舌を這わせる俺を、どんな眼で見てるんだろう。ふと思い付いて目線だけ上げると、自分で命じておきながら奴は泣きそうな顔をしていた。

誰もいない部屋で、俺のいない部屋で、たった一人きりで泣く顔をしていた。

その歪められた脆弱な眼差しに晒されて、もう一度、殺してやりたいと思った。

彼の全てを暴ききる前に、終焉をくれてやりたいと思った。




唾液が絡み付く白い手は、もはやとても美しいものには見えなかった。










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