JR@

□フリージアの咲く部屋/2
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君は。

覚えて、いるのだろうか。






僕たちが知り合って、間も無い頃。

君に。信頼できる友人以上の感情を、抱き始めていた。過去。

ライブハウスからの帰路。何気ない、話の途中で。

一度だけ。君に、告げたこと。

ずっと覆っていたはずの、本心は。

あまりにも、簡単に。零れ落ちた。

「たすけて。」

その、言葉だけで。

全て。理解してほしかった。

なのに。

「ん?なんだよ?」

当たり前の顔をして、問い返す。君は。

この世で最も。残酷な、いきものだった。

感情を覆い隠すのだけがうまかった、僕は。

たった今、起こった。数秒間を。消し飛ばすように。

笑顔を、つくる。

「なんでもない。」

死ぬほど。苦しかったのに。






悪くない。悪くない。

僕は。悪くない。

僕の後ろで、四弦を奏でる。君の指が、好き。

いつだって、背中を押してくれる。低くて、掠れた。君の声が、好き。

傷付いた腕に、包帯を巻いてくれる。

僕を見る。君の眼が、好き。

だけど。

君と。セックスするくらいなら。

あいつに、強姦された方が。ましだ。

だって。

君は。あいつとは、違う。

君は、まっすぐじゃなきゃ。

まっしろじゃなきゃ。いけない。

そんな君だから。見ていてほしいと、望んだんだ。

赤に染まってゆく、僕の身体が。

この、血の色が。

汚れていないと。証明して、ほしかったんだ。

いつだって。たった一人の記憶へと、僕を還してくれる。

道しるべのような。この、血。

世界で最初に、僕の傍にいて。

一番に。たすけてほしいと、望んだひと。

母親。

彼女には、言えなかった。

あんなこと。言えるはずが、無かった。

母さんは、あいつを信じきっている。

きっと。僕のことより、愛してる。

母さんに。

捨てられたく、なかった。

独りぼっちは。いやだ。

僕は。悪くない。

僕を、こんな人間にした。あいつが悪い。

たすけてくれなかった。みんなが悪い。

僕はずっと、求めてたのに。

たすけてほしいって。叫んでたのに。

どうして、誰も。気付いてくれなかったの。

身体を汚されて。心も汚されて。

あいつが楽しむため、だけの。都合のいい、おもちゃにされて。

毎日毎日。死ぬことばかり、考えて。

生きて。

非現実的な自己破壊に、望みを託すほど。追い詰められていたのに。

誰も。たすけてはくれなかった。

あいつらは、口ばかりだ。

本当は。俺のことなんて。どうでもいいくせに。

何も。してくれなかったくせに。

俺、そんなに汚い人間かなあ?

生きてちゃいけない、人間なのかなあ?

ぼくは。わるくない。

わるく、ないよね?

J。








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