IR

□死、ではなく。
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死。

それが、君の一番に望むことなら

僕は、それを叶えてあげたい。

君の一番の願いを、叶えてやれる人間になりたい。




けれど

僕には、できない。

君を、殺すことができない。




自己よりも、ある特定の他者を大切に想うことが愛なら

僕は、君を殺してあげなければならなかった。

君に死んでほしくない。

そんな身勝手な自分を沈めて

君の唯一の願いを、大切にしてあげるべきだったんだ。




君を殺せない僕に、きっと君は失望する。

君を失望させてしまった、そんな僕に、僕自身もまた失望する。

それが、愛じゃなかったことに、失望する。




死んでほしいなんて、思ってはいなかった。

ただ、閉じ込めていたかった。

どこにも行かないよう、誰にも触れられないよう。

時間さえも、君自身でさえも、君に干渉できないように。

その術を、僕はまだ知らない。




それが、存在するのかさえも、僕は知らない。








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