IR

□He Were My MOTHER.
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俺の願いを叶えるのは


あなたなんじゃないかって、思ってた。





あなたといると、母親を思い出す。


言えないけれど、あなたと寝る時、俺はいつも母さんのことを考えてた。


絶対に、言えないけれど。


それから、父のことも思い出したりした。けど、すぐに打ち消した。


あなたは、母さんに似ているのかな。


あなたは男なのに、母親だなんておかしな話だって


笑うかな。





でも、本当は


全然違うんだ。


あなたと母さんは、全然違う。





叶えてあげる、って。言ってほしかった。


殺してあげる、って。そう言って


触れてほしかった。


そんな俺の期待も、あなたは全部見抜いていたから


だから、傍にいてくれたんだと思う。


(行こうか)


嘘でも、手を取ってくれたんだと思う。





なんだっていいんだ。


ただ、その手を握り返したくて。


離したくなくて、そうした。


ずっとひとりが辛かったことに気付いて、あなたを憎んだりもした。


こんな日に、ひとりじゃなくてよかった。


つないだ指先の果てに、何があるのかなんて知らないけれど


あなたでよかった、って。ぼんやりと考えるのは


きっと、あなたが軽々しく口にする、「幸せ」ってものなんだろう。





あなたがくれた、青い空は、ずっと大切にする。


あなたがいなくなった、その後も。ずっと。










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