IR
□Cherry Blossom Fairy Tale/2
1ページ/3ページ
明日が。君を。
俺の手の届かない場所へ。連れ去ってしまう。
俺は。いつから。
こんなにも。君のことを。
好きになって、しまったんだろう。
熱に浮かされながら。俺に微笑みをくれる。眼差しの真摯さと、迷いの無さに気付いた時から。
どんな理由であれ。俺の部屋を選んで、真っ先に訪れてくれた。君の脆さに触れた時から。
君とまた、音楽をやれるって。そんな機会を手にした時から。
お互いに。別々の道を。歩き始めた時から。
思いを込めて。大切に創り上げた、あの曲を。君が声にして。やっと完成したんだと。震えるような喜びが、胸に押し寄せた時から。
ライヴハウスで、危うげな。君の唄声を、聴いた時から。
君に。
君に。はじめて。出逢った時から。
着ているものを全て脱がせると。隆一の白い肌は、薄紅色に染まっていた。
体温が上がって、火照った身体は。より強い、桜の芳香を纏っている。
眩暈がしそうだ。
熱のせいなのか。これも病気の症状なのか。
わからない。わからないけど。
倒錯的な興奮が湧き起こって。
いつから、とか。どうして、とか。
そんなこと、きっと。答えられない。
ただ。
これだけは。真実だ。
俺は。君を。
愛してる。
こんなにも。欲しがってる。
限られた時間で。話さなくちゃいけないことは。たくさんあったはずなのに。
そんなこと全部が、どうでもよくなって。ただ。
今は。君に。
さわりたい。
君のすべてを。身体いっぱいに。
感じたい。
衝き動かされるままに。自分も服を脱いで。
裸の胸を合わせた。
「いのちゃん。あったかいね。」
君の両腕が。背中に回される。
気持ちいい。
柔らかな桜の香と。体温に包まれて。
護られてるみたいだ。
「身体。きつかったら、言って。」
そもそも。病人に何やってるんだって話なんだけど。
頷いて、はにかんだ。君の顔が。
あんまり、たどたどしくて。ぎこちなくて。
それが逆に。俺を煽ってるようにしか見えなくて。だから。
人差し指の絆創膏を剥がして。
花びらみたいな。傷痕を舐めた。
記憶に刻み付けるみたいに。一本一本、全部の指を。丁寧に口に含んで。
指だけじゃなく。他のところも舐める。
髪をかき上げて。露わになった耳の奥まで、舌を突っ込んで。
くすぐったそうに身を捩るのを制して。首筋のほくろを辿って。
乳首を舐めて。吸って。舌の上で転がした。
君は。息を潜めるみたいに。じっとしてる。
性器を触ってみると。そこは柔らかいままだった。
自分でする時みたいに握って、擦り上げてやったけど。全く反応が無い。
「なんか。ダメみたい。」
小さく呟かれて。顔を上げると。
君はすごく。申し訳なさそうな表情で。
そんな顔。させたくないのに。
「熱のせいかな。わかんないけど。たたないみたい。」
俺が勝手に、始めたことなのに。
君が、悪く思う必要なんて。これっぽっちも無い。
罪悪感に苛まれなきゃならないのは。俺の方だ。
それなのに。
「いのちゃんの。したいようにしてくれて、いいから。」
頬を真っ赤にした君の。頼りなく、消え入りそうな。その言葉に。
理性の箍を。はずしてしまった。
自分がこんなにも。
欲望に弱い人間だったなんて。
この年になって。初めて知る。
しなやかな両脚を抱え上げて。
勃起した性器を宛がった時。君は。
見たことも無いような。強ばった形相をしていた。
それでも。嫌だとか、やめろとは。一言も口にしなかった。
先端を潜り込ませる。
君の平らな胸が。ひくりと跳ねるのが見えて。
脚を大きく開かされて。灯りがついたままの部屋で。
全部を。俺の眼に晒されて。
唇を噛んで。眉を寄せて。羞恥とか。痛みとか。いろんなものに耐えてる君が。
心から。いとしいと思う。
この身体が、消えて。失くなってしまうなんて。そんなこと。
許せない。
考えたくない。
暗闇に引き摺りこまれてゆきそうな。重く冷えきった思考を追い払おうと。足掻いて。
目の前にある、君の。熱い身体だけに集中する。
滑りをよくするために、石鹸を使ってはみたものの。
お互い勝手がわからないせいか。なかなか、うまくいかなくて。焦れる。
君の身体に、過剰な負担をかけたくないから。
今更かもしれないけれど。早く終わらせてあげたい。
少しずつ入り込んだ。君の中は。
熱があるからなのか。怖いくらいに熱くて。きつくて。
蕩けそうだった。
やばい。
すごい。きもちいい。
新鮮な感触に。我慢が効かなくなって。
足首を肩にかけて。力任せに、腰を動かす。
君が少しも、感じていないのは。明らかで。
つらそうに、苦しそうに。眉を歪めて。額に汗を浮かべて。
皮膚の下の薄紅色が濃くなって。噛み締めた唇から洩れる呼吸は。呻き声を抑え込もうとするかのように。不規則に乱れてく。
こんな風にされて。気持ち良くなれるはずが無い。
痛いだけに。決まってる。
それでも。
やめることなんて。できない。
やめたくない。
ぎゅっと、固く閉ざされた。薄い瞼に唇を付けて。
目尻から零れる雫を。舐めとってやった。
それくらいしか。してあげられなかった。
二つに折られた、君の身体は。ちぎれそうに。悲鳴を上げて。軋んで。
溺れる子供が、必死で助けを求めるみたいに。縋り付いた爪の先が。俺の背中に食い込んで。
桜の香が。部屋いっぱいに満ちて。
気が遠くなって。
程なくして。俺は。
君の中に。射精した。
・