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□僕たちの居た午後
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俺のも触って、と言われて。手を取られ。

導かれたそこは。服の上からでも、しっかりと硬くなっているのがわかる。

一旦、起き上がってから。お互い、自分で服を脱いだ。

全裸になって。もう一度、抱き合って。

脚を絡めて。しばらくの間、深いキスを繰り返す。

「隆ちゃん。口で、してくれる?」

いい?と、耳元で。熱っぽく、お願いされたら。

今更。拒否できるはずも無く。

無言で頷いて。すぐに。

勃起した、君の性器を。口に含んだ。

フェラチオなんて、するのは初めてだったけれど。

意外にあっさり、踏み出せてしまって。自分でも驚いた。

口に入れた性器は。なんの味もしない。

自分がされた時のことを思い出しながら。一生懸命、舌を使う。

上から下まで、丁寧に舐めてあげて。唇で扱いて。

へたくそだったら嫌だなあ、と。不安に思っていたら。

君が、僕の髪を撫でながら。

「すごい。気持ちいい。」

そう、誉めてくれた。

いつもとは違う、低く掠れたような君の声が。その言葉が嘘じゃないことを、伝えてきて。

なんだか。嬉しい。

君は、僕の髪を撫でていた指を。背中に滑らせて。

そのまま、また。恥ずかしい場所を、指で弄り始める。

思わず。君のを咥える唇から、呻き声が洩れてしまった。

「挿れてほしくなったら、言うんだよ。」

僕の気持ちが。手に取るように、わかるみたいに。

意地悪な口調で。君が、笑うから。

悔しくなって。おかしな対抗意識が湧いてきて。

「もう。挿れて。」

これ以上無いってくらい。思いっきり、艶を含ませて。甘えた吐息で。ねだってやった。

案の定。君が、眼の色を変えるのがわかる。

ほら。やっぱり。

君だって。早く、入りたいくせに。

「後ろから、挿れるから。力、抜いてて。」

身体を四つん這いにさせられて。

尻を高く上げさせられて。

先端が。宛がわれたと、思ったら。

ぬるりと。入り込んでくる。

覚悟していた。想像を絶するような、痛みは無い。

オイルを充分、塗り込んだせいかもしれない。

けれども。痛くないとは言っても。

それが、即快感に繋がるかと言えば。全く、別の話なんだけど。

全部、入ってしまってから。しばらく、腰を密着させたままでいた。君は。

突然。なんの断りも無く。動き始める。

皮膚のぶつかり合う音を。僕の間抜けで、いやらしい喘ぎがかき消す。

何やってんだろ。ふたりして。

数時間前までは。こんなことになるなんて。

これっぽっちも。考えちゃいなかったのに。

セックスなんて。ほんと。

バカみたいだ。

意味無く、垂れ流される。潰れたような自分の声が、うるさい。

「隆ちゃん。どんな風に、いくのが好き?」

動きを止めて。背中から、ぴったり身体をくっ付けて。

僕の性器に摩擦を与えながら。耳元で。湿った吐息で。君が、囁く。

考えるより、先に。

答は、唇から滑り落ちていた。

「いっしょに・・・いくのが。」

何。言ってるんだろう。

こんな。恥ずかしい台詞。

どうかしてしまったとしか。思えない。

それでも。

セックスの時に限っては。こんな、薄ら寒くなるような台詞が。お互いを気持ち良くさせるのに、役立つんだから。

なんとも。滑稽な話だ。





一緒にいくため、なのかは知らないけれど。

一度、引き抜かれて。体位を変えられた。

両脚を高く持ち上げられて、足首を肩にかけられる。

ひどい格好だ。

真昼間から。こんなに、脚を広げて。灯りも点けたままで。

口に出せないようなところを、何もかも。丸見えにされて。

普通の精神状態だったら、耐えられない。

でも。

女の人って、いつもこんな格好してるんだよな。

よく、できるよなあ。

やっぱり、女性は。尊敬に値する。

そんな、余分な雑念に捕らわれていたら。

いきなり、また。身体を貫かれた。

激しく、腰を動かし続ける。いのちゃんの顔を。初めて、まともに見ることができて。

普段は感情を、あまり表に出さないのに。

今は、なんだか必死で。汗をかいて。眉を歪めて。

荒い息をついている。そんな、姿を見ていたら。

すごく。せつない気持ちになって。

下腹部に力が入って。ぎゅっと、君のを締め付けてしまった。

「隆ちゃん、きつすぎ・・・そんな締められたら、いっちゃうって。」

「いいよ。俺も、いきそう。」

浅い呼吸の隙間から。必死で紡ぎ出した言葉は。

ちゃんと、君に。届いてたみたいだ。

今までとは比べものにならないくらい。速く、激しく。揺さぶられて。

内臓の奥深く。僕の中の、すごいところを。性器の先が、ぐりぐり擦って。

身体が痙攣して。抑えきれず、絶叫みたいな声を出してしまったら。

君は、余計にしつこく。同じ場所を、擦り上げてきた。

殺されるかと思うくらいに。容赦無く。

ああ。

だめだ。もう。

いきたい。

きもちいい。

死にそう。

頭の中が、ぼんやりして。ふわふわして。

思考が、纏まらなくなってくる。

ただ。

君の眉が。一際、苦しそうに歪んだ時。

あ。いくんだ。

僕の。こんな身体で。

射精、するんだ。

そう。思ったら。

なぜだろう。とても。満たされて。

胸の辺りが。じんわりと、あったかくなるのを。感じて。

今、君を。抱きしめられたらいいのに。

そう、望むだけで。届かない手を。

シーツの上で、君は。指を絡めて、強く握ってくれた。

それから。

突然。君の性器が、引き抜かれて。

同じように勃起していた、僕の性器と。擦り合わせるように握られて、いっぺんに扱かれる。

それが、あんまり気持ちよくて。

待っていた刺激に。何がどうなったのかも、わからないままに。

僕は。射精していた。

気付くと、君の性器からも。白いものが吐き出されるのが見えて。

なんとなく、ほっとして。瞼を閉じる。

なんだか、すごく。疲れたけれど。

君が。気持ちよくなってくれて。

よかった。

頬の上に。柔らかな、唇の感触が降ってくる。

いつの間にか、目尻に溜まっていた涙を。

君の指先が、優しく拭ってくれた。





「どうして。中に出してくれなかったの。」

二人して。ティッシュで後始末をしながら、訊いてみる。

お腹に出した精液は、君が拭いてくれたけど。

さすがに他の場所を。終わった後だってのに、面と向かって晒す気にはなれなかった。

「変なこと、訊くね。」

クローゼットから出してきたTシャツを、僕に手渡しながら。

呆れたように、いのちゃんは笑う。

「もっと、他に。訊いておいた方がいいこと、あるんじゃない?」

「そうかな。」

「そうだよ。」

自分も服を身に着けて。すっかり、寛いだ様子で。煙草に手を伸ばした、君は。

ふと、何かに思い当たったみたいに。直前で、その手を収めた。

僕に。遠慮しているんだろうか。

替わりに、引っ込めた手を。ぽん、と。僕の頭に載せる。

「たとえばさ。俺がどうして、こんなことしたのか、とか。興味無い?」

「それって。そんなに、重要かな。」

「重要だと思うよ。少なくとも、された方にとっては。」

そうか。

されたのは、僕なんだ。

何もかも。嵐のように過ぎ去ってしまったせいで。どうにも、実感に乏しい。

「まあ、俺は。このままでも、構わないけど。」

嬉しそうに肩を揺らしながら。猫にでもするみたいに、僕の頭を撫で続ける。

「身体も、合うみたいだし。」

「何、それ。」

身体が合うって。

相性がいいって。ことなのかな。

こんなセックスをしたのは、初めてなんだから。よくわからない。

でも。

いのちゃんは、最後まで。僕が初めてだとは、気付いてなかったみたいだ。

あっさり、入ってしまったせいかもしれないけど。

まあ。そんなこと。敢えて告白する必要も無いから。

これからも。黙っておこうと思う。





申し訳程度にと。思いきり途中から、鑑賞を再開した映画は。

ストーリーが、もう。手が付けられないほど、ちんぷんかんぷんで。

ベッドの上ってのも手伝ってか。はたまた。あんなことをした後の、気だるさのせいか。

大して時間も経たないうちに。二人並んで、仲良く。

夢の世界へと、旅立つことになってしまった。





自宅まで。車で送り届けてくれた。

いのちゃんは、別れ際。繋いだ指先に、力を込めて。

じっと。僕の顔を、覗き込む。

「今日のこと。誰にも、内緒だからね。」

考えの読めない、曖昧な。いつもの笑顔をしているくせに。

眼だけは、全然。笑っていなくて。

怖いくらいに。まっすぐで。

そのまま。距離が縮まって。

そうっと。キスをされた。

さっきの激しさが嘘みたいな。ほのかに温かみを感じるくらいの。優しい、接触。

そのせいで。答える機会を逸してしまったけれど。

僕は、誰にも。喋ったりしない。

と、言うか。暴露する必要性を感じない。

君が何を恐れているのかは、知らないけど。

僕は、誰にも言わないし。君に迷惑をかけるようなこと、するつもりは無い。

ただ。君は。

これからも、僕を。あの部屋に、呼ぶだろう。

そして、また。

あのバカげた行為に、耽るのだ。ふたりして。

僕なんかの身体を選んだ、君の神経は。未だ理解しかねるけれど。

いつも冷静沈着な君の、あんな顔を見れたのは。正直、すごく新鮮で。面白かったから。

だから。

ほんと、バカげてるけど。セックスも悪くない、なんて。

込み上げる笑いを、ため息で殺しながら。

今更、怖がってるみたいに触れてくる。臆病な、君の唇に。

柔らかく。お仕置きするみたいに。

歯を尖らせて。齧り付いてやることにした。





ほんと。バカみたいだ。

僕も。それから。

こんな僕のことを、好きな。君も。








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