小説

□春の華
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そして俺は、
夢の中へと誘われる・・・



春の華 〜夢華〜


「・・・ん・・?」
眼を射すような日差しが自分の視界を覆う。
耳には、鳥の囀る声が聞こえる。
頭が激痛を訴えてくる。
− 昨日、一体何があったんだ? −
記憶の薄い、激痛の走る脳を必死に巡らせ、一つのことを思い出した。
「そうだ、たしか・・・」
淡い桃色の同じ年頃の乙女。
あれは夢だったのかそれとも・・・。
「ああ!お目覚めかい、サスケ君」
遠慮なくサスケの部屋の襖を開け放つと、平然と胡散臭い笑顔を向けてくる。
「なッ!?なんでお前此処にいるんだ!!?」
サスケは周りを見回してみたが明らかに自分の部屋であると確信する。
「え?君が昨日遊郭で倒れちゃったから、僕が運んであげたんじゃないか」
カブトは清々しく、恩着せがましくそう言った。
「だからって泊まることないだろ!」
「だって僕も相当酔ってたからね。君のお兄さんが泊まってって良いって」
それを聞いて唖然とする。
「兄貴が?」
溜息混じりに頭を抱えながら項垂れる。
『全く何処までも人が良いんだから・・・』
とりあえず、とサスケは腰を上げ兄が居るであろう居間へと歩き出した。
生活感の漂う障子を開ける。
「ああ、おはようサスケ」
昼頃に起きてきたというのに優しい眼差しと言葉を向けてくるたった一人の兄弟。
「ん。おはよう、兄貴」
飯は食べるかと聞きながら兄は食事の支度をテキパキと始める。
それに対し、「ああ」とだけ答えると違う思考を巡らせながら席に着く。
『これだけ頭が痛いってことは、昨日のあれは夢じゃないってことだよな・・・』
ふぅと頬杖をつく。
−無理はしないで下さいね−
『また逢えるだろうか・・・』
「ぼーっとしてどうしたんだ?」
いきなり現実に引き戻され体がビクンと跳ねる。
「あ・・・いや何でもない・・・あ。そうだ、あいつもう泊めてやらなくてもいいから」
ふと思い出したので忘れないうちに兄に告げる。
あの男はどうにも受け付けられない。
「あいつ・・・ってカブトさんのことか?なんで・・・」
兄がとまどっているうちに用意してもらった茶漬けを胃の中に流し込む。
「ご馳走様」
そういうとさっさと立ち上がり居間を後にしようとした。
「っサスケ!」
「ん?」
思わぬ声に障子に手を当てたまま立ち止まり振り返る。
「あんまり無理なことはするなよ」
「?・・・ああ」
そう返事だけするとそのまま家をあとにした。
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