小説

□クローバー
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ちっぽけなちっぽけな存在。
でもそのちっぽけさが奇跡のように感じる。






「ほら、見ろよ玉藻」
草場を散歩中、いきなり呼び止められる。
「なんですか?そんな所にしゃがみこんで…」
嬉しそうな顔を向けてくる鵺野と視線を合わせる為に玉藻も側へとしゃがみこんだ。
「ほれ」
嬉々として見せてきたのはただの草。
「これがなんです?」
「え、何って四つ葉のクローバー。珍しいだろ?」
鵺野に言われて見て見れば確かに葉が四枚に分かれている。
「そういえば人界では幸せの御守りとしてそれを持つんでしたね」
そーだよ等と返事をしながら鵺野は四つ葉を見つめる。その余りの喜びように、玉藻は思った事を口に出す。
「いくら四枚の葉が珍しいからと言ってもそれはただの雑草ですよ?」
そこら辺に生えてきてるようなただの草。そんな物にそこまで喜ぶのは理解できない。

「確かにな。でも身近なものだから親しみやすいってのもあるんだ」
「はぁ…?」
正直鵺野の云わんとしている事が分からない。
「クローバーもただの草だ。そこらじゅうにある。でもちっぽけな存在の中のさらにちっぽけな偶然を自分の身で温かく感じたらそれが“幸せ”になったりするんじゃないか?」
いつもと変わらない満面の笑顔。
その視線から自分の視線を外す。

「じゃあ…今鵺野先生と一緒にいてここが温かく感じる私も、幸せって事ですか…?」
そう言って胸の辺りを軽く抑える。
その行動が、その言葉が自分の中へじわじわと染み渡っていくのがわかった。
目の前のこの相手は自分の云わんとしている事がはっきりとではないがちゃんと理解してくれた。

「俺も幸せだ!」
未だ自分から視線を外し、照れ隠しをしている愛しい相手を優しく引き寄せ自分の胸の中に抱き止めてやった。








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