クラシック・デイズ
□稲妻走る、
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これはほんの少し前のお話
彼と彼女が出会ったときの―。
その日、ザンザスは相も変わらず人を寄せ付けない雰囲気を纏って暗い路地裏を歩いていた
辺りはとっぷりと暗くなり、天上にあったものは青空と太陽から夜空と月になってしまっている
ぽつぽつとオレンジ色の光を灯す外灯に顔を照らされては消え、を繰り返し
どこに行くというでもなくただ暇を持て余しての外出だった
いつものように長い銀髪の部下を殴りつけた後、つまらなくなって護衛もつけずに。
元より、ザンザスの強さがあれば護衛など不要だが
抱え込んでいる数人の愛人で性欲処理という気にもなれずに、フラフラと宛てもなく歩き 今に至る
もう何時間、こうして歩いているだろうか
肩から掛けた隊服のコートに入れていたケータイがブルブルと震える。出かけてから幾度か掛かってきたかが分からない程、頻繁に着信が掛かってきており
掛けてくる者の目星がついているだけに出る気にもなれず
気が付けば止んでしまったそれを放って、かち合った三叉路の一番左端をスタスタと進む
石灰石をレンガのように長方形に切って埋め込まれた石畳は長い年月を経て、ところどころがすり減っていた
白くなく黒ずんだ石畳を革靴で踏み鳴らす
砂利を踏みしめているかのように、ザリザリと靴が鳴る
「……?」
ザリ、と一つ足音を鳴らして立ち止まった。石畳を踏む音とは別の音がザンザスの耳に届く
風の吹く音でも動物の鳴き声でもない。金を切るような…
何だかそれがやけに耳に残り、つい音源を探そうとキョロキョロと視界を左右に巡らせる
「…あれか」
ふと目に止まったのは軒先に吊された小さな看板
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