クラシック・デイズ

□稲妻走る、
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外壁から突き出した金属の棒のようなものに通すようにして、丸いリングが付けられた半円形の看板が下げられていた


深緑のそれには酒瓶と音符のマークが共に描かれている。多少レトロな作りな気もするが、何故か吸い寄せられるようにして、ザンザスはその 恐らく店であろう中に入った



古めいたドアを押せば カラーン… とドアベルが鳴り響く


バタンとドアを閉じればその衝撃を受けて一際大きくベルが鳴った

2度も3度も反響するベルが煩わしくて、舌打ちをしてドアベルを見上げる


けれども、いちいちそんなものを壊すほど器の小さい男ではないと頭を振って滲んだ怒りを振り払った

と、冷静さを取り戻すと次いで今度は女の歌声が聴覚を刺激した。今晩はやたらと音に苛まれているようで



まるで音の幻覚をかけられているようでいい気がしない



耳に入り込む歌声の美しさがザンザスをそんな気にさせたのだろうか

板張りの床を進み行けば、広めのホールとライトに照らされたステージが目に飛び込んできた



丸い電球がステージを縁取るように取り付けられ、煌々と輝くその中心でスラリと伸びたマイクスタンドを前に、一人の女性が歌っている


あれがこの苛立ちの原因かと、じろりと睨みながら適当な席へ着けばすぐにウェイターが水の注がれたグラスを運んできた

短いやり取りをして酒を頼むと、いつものようにドカッとテーブルに足を乗せ横柄な態度を取る

じっとステージの女性を見つめ、ホールを埋め尽くすメロディに何となく耳を澄ませ

小鳥の囀りのように可憐で美しい歌声は、乾いた紙に水を落としたようにスー…っとザンザスの心に染み渡っていった







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