詩愛の文。

□少女のお部屋。
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血は、一定の間隔で奥の部屋まで続いている。
私はあまり難しく考えるのはやめて、血の続いている方へと歩いていくことにした。
そして、私がドアの手前まで行くと、あの女の人の話し声が聞こえてきた。

「また何か考え事?あんまり悩むとかえって辛くなるわよ〜?」
「今日は何をして過ごそうかな〜って、考えてただけです。私がそんなに悩んだりするような人間に見えますか?」
もう一人は、あの女の人より若い・・ように聞こえる。
「確かに、見えないわね。ふふ。」
「あ、それより、さっき私のこと呼んでませんでした?」
「そうそう、ついに新しい仲間がやってきたのよ!とってもかわいい娘なの。ほら、ここに・・あれ?・・置いてきちゃったみたい。呼んでくるわね〜。」
ガチャ、と扉が開いてさっきの女の人が出てきた、と思ったら。
私に気付いていないのか、すぐ横を素通りして行ってしまった。
私が部屋のほうを見ると、開きっぱなしのドアの向こうで、私と同じくらいの年の少女が微笑んでいた。
「ごめんね、美穂姉さん、いつもちょっと抜けてるから・・。どうぞ、部屋に入って。ちょっと散らかってるけど、好きなところに座ってね。」

部屋の中に入ると、そこは城の中とは思えないほど、普通の部屋だった。
勉強机らしきもの、テレビ、MDプレーヤー、・・。どこからどう見てもただの学生の部屋。
「ようこそ、私の部屋へ!私、理枝。よろしくね。」
そう言うと少女はにっこり笑った。
制服らしき服を着ていて、長めの髪、年は・・多分15,6才位。普通の学生にしか見えない、普通の少女。
・・左腕の付け根あたりから腕が無く、そこからとめどなく血が滴っていることを除いては。
「えっと、あなたは何ていうの?名前、早く覚えなくちゃね。」
肩から流れる血なんて気付いていないかのように、理枝という少女は明るく言った。
「香よ。こちらこそよろしく。」
私もそのことに触れなかった。彼女が気にしていないなら多分それでいいのだろう。

「あ〜!ここにいたのね・・。ずいぶん探し回ったのよ?でも、見つかってよかったわ。」
後ろで、『美穂姉さん』の声がした。
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