アルカディア
□〜序曲〜
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─放課後
誰もいない教室
俺は机の中身を鞄へと移動させた
呼び出されて逃げ遅れた俺は久々に延々と説教された
─ふざけんな
一時間以上も説教すんなよ…
と…
ピンクの封筒がヒラヒラと机の中から落ちた
─またか
俺は封筒を拾いあげる
『藤井郁弥さま』
差出人の名はない…
俺は少し考えて封筒を破り捨てようとした
「なんだ?
フミヤ、手紙かぁ?」
─『うわぁっ』
ひょいっと後ろから封筒を奪われた
誰もいないと思ってたから俺は普通以上に驚いた
…振り向くと俺の悪友、鶴久政治が勝手に封筒を開けていた
『返せよっ』
「破ろうとしてたじゃん」
俺が封筒を取ろうとすると政治はスルリと避けた(笑)
「なになに?
伝説の木の下で待ってます…?」
『返せよ』
手紙を読んだ政治はあっさり封筒を返してよこした
『……ったく』
俺は一応封筒を
畳んでポケットに入れた
『帰ったんじゃないのかよ?』
「愛しのフミヤくんと帰りたくて」
…………
「冗談だぞ?」
『……笑えねぇよ』
悪い冗談だ
『帰るぞ』
「おぅ」
俺は政治を促し教室を出た
ひんやりした廊下に出る…
俺は早足で歩く
─「なぁなぁ」
『…あ?』
「伝説の木って?」
『……知らねぇの?
某ギャルゲーのパクリだよ』
「……ときメモ?」
『…だっけ?』
「伝説の木の下で
女の子の告白で生まれたカップルは永遠に結ばれると言う…」
『……それだ』
「そんな伝説あったんだ?」
『…あったって言うか作ったらしい…』
「知らなかったぁ」
俺は無言で前を歩く
『なぁ〜
余計な伝説は作らないで欲しいよなぁ〜』
「何で?
いいじゃん何か」
『バーーカ
呼び出される身にもなってみろよ』
「…呼び出された事ねぇよ?」
………
俺は政治を見る
「あっ
お前、呼び出された事あんのかよ」
『…遊びだよ。遊び』
「あんのかよ」
『だから、面白半分で呼び出すんだよ』
「あ・ん・の・か・よぉ〜〜〜」
噛みつかれそうな勢いだ
『あるよ』
「あるだぁぁぁ〜」