Dream

□imitation rainy
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「……………雨」

ぴちゃん、と水がたてる音と共に呟かれた言葉は、滴っている水滴の様に小さくか細かった。

「なんだ?」

独り言だっただろうその言葉に、けれども常日頃からは考えられない位惚けている弟を見て、気になったヴァイスは問い掛けてみる。
返答は期待していなかったが、ヴァイスの予想に反してネロはぽつりぽつりと話し始めた。

「兄さんは雨を見たことがありますか?」
「いや、見たことはないな。知識としては知っているが」
「大気中の水蒸気が高所で凝結し、水滴となって地上に落ちるもの。それが雨ですよね」
「あぁ、そうだな」
「兄さんは、それが綺麗だと思いますか?」

弟の唐突な問いにヴァイスは面食らって驚いたが、表情には微塵も出さず、何を馬鹿なことを、と笑う。

「空から水が落ちてくるだけの現象が美しいものか。
あぁ、でも殺した相手から滴る血は只の液体でも美しいと思うがな」
「そうですよね…僕もそう思います。後者についてはよく分かりませんが…」

自嘲気味に笑むネロは、ぽたりぽたりと落ちる水滴から視線を外さずに、そしてその落下のリズムに呼応する様にぽつりぽつりと話し始めた。




「雨が好きだと言っていた女がいたんです」




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