★文【パラレル】★

□最後のkiss《中編》
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真夜中の真っ暗な診療所の廊下にコツコツと足音が響く。薄暗いランプの明かりで術の本を読んでいたドクターくれはは、ドアのノックの音に顔をあげ眼鏡を外すと入りなさい、と一言呟いた。扉が開いた先で黒髪の女性が手を振っていた。


「ごきげんよう、どうかしたの?元気が無さそうね」
「フン、お前かい」


女性は素っ気ない言葉をかけられたにも関わらず嬉しそうに微笑んでくれはの座っている机の向かいに座った。


「どうもこうも知り合いがね、ややこしい事に巻き込まれちまったらしい」
「へぇ?」
「チョッパーの数少ない友人なんだ、どうにかしてやりたいのが親心ってもんだろう?」
「そうね、ドクターくれはらしいわ」


彼女達の横で机に俯せた状態で眠っていたチョッパーの背中をくれはは優しく撫でた。


「・・・ところでお前こそどうかしたのかい。珍しいじゃないか、お前から訪ねて来るなんて」
「フフ、当ててみて?」


くれはは面倒くさそうに溜め息を吐いたが邪険にする事なく腕を組んで女性を見つめた。


「・・・何かあった顔だね」
「少し簡単すぎたかしら」
「魔女をナメるんじゃないよ、お前の何十年も歳を重ねてきてるんだ」
「そうだったわね・・・実は私」
「・・・」
「呪怨の銃を造ったの」
「お前!!」
「しょうがないじゃない、そうしないと、私殺されてたわ」
「・・・脅されたのかい」
「・・・突然家に訪ねてきて、一夜で造らなければ殺す、と」
「・・・」
「材料も全て持っていたの、術師しか知らない筈の材料を」
「・・・名は」
「わからない・・・でも“闇”そのもののような男だった・・・ねぇくれは。禁忌を犯した私は魔女界から追放かしら?それとも火炙りの刑かしら?」


自虐的に笑い、そして少し黙ってしまった女性を見てくれはは調書のようなものを机に置いた。


「?」
「あの地下施設で、不穏な動きがあるらしい」
「・・・」
「近く、極秘の発表があるみたいだ」
「発表・・・」
「・・・チョッパーの友人が関わってないといいが・・・お前に頼みがある」
「くれはの為なら」
「地下施設を調べてくれないか、お前の魔力を誰よりも信頼してるからこその頼みだよ」
「・・・えぇ、わかった」
「チョッパーの友人にも接触してくれないかい?」
「・・・それは魔女として?それとも一人の人間として?」
「お前が決めな・・・それから」
「・・・」
「呪怨の銃の事は施設の件が無事片付いたら帳消しにしてやるさ。あまり気にするな、身を滅ぼすのは撃った本人だ」
「ありがとう・・・くれは」


感謝するように微笑むと、女性は扉を開けて診療所を後にした。


「・・・闇のような男、か」


くれはの呟きに、横で眠っていたはずのチョッパーは薄く目を開けたのだった。






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