★文【パラレル】★

□そばにおいで
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ここは『麦わらカンパニー』
小規模ながら、玩具業界で一二を争うという実力を兼ね備えている今注目の会社である。
ガラス張りのビル10階建て、全体が三角形の形になっており、有名な企業が立ち並ぶこの区域でもまず目立つ存在になっている。
そんな会社の一角・・資料室から盛大な音が鳴り響いた。

「いっ・・・・てぇ」

沢山の資料の山から人の頭が出てきた。鮮やかな緑色の髪を覗かせたのは庶務課に所属する平社員、ロロノア・ゾロだ。
この会社に入社してもう3年になるのだが、未だ雑用係のような仕事ばかりしている。何故かと問われると、まず他の社員の第一声は会社内で迷子になると言うのだから、否めない。

「くそっ!!何でこんなに山積みにしてんだよ・・古いもんは捨てろよな・・」

打った頭を擦りながらゾロは落ちてしまった大量の資料の前に、立ち尽くした。

「・・・・はぁ」

体力仕事は嫌いではない。嫌いではないが・・雑用仕事は全部俺かよ、とゾロは一人呟いた。
成り行きでこんな大手企業に入社出来たのは喜ばしい事だが、ゾロに不満が無い訳では無かった。

「片付けるか・・」

嫌になるのを我慢しつつ、ゾロは資料に手をかけたその時―

「ゾロ!!見つけた!!」

明るい声が後ろからしたと思った時にはゾロは押し倒されていた。


「いってぇ・・・・」

今度はおでこをぶつけたゾロは今日は厄日だ、と眉をひそめる。
相手はわかっているが、俯せの状態から無理矢理首をひねって押し倒した犯人を睨んだ。

「お前・・俺を怒らせてぇのか・・」
「ん?ゾロ怒ってたのか??」

ゾロの上に乗ってしまっているのに何の悪気も無い振る舞いをする少年、モンキー・D・ルフィであった。
まだ幼さの残る笑顔が特徴の彼は何とこの会社の社長の御曹司・・言うなれば次期社長である。しかしながらその事を知っているのはごく限られた人間しかいない。
その為、ゾロ自身ルフィの本当の正体を知らなかった。

「・・色んな意味でな、特にお前に対しては」
「へ〜〜俺の事ばっかり考えてくれてたのか♪」
「違ぇよ!!お前が、俺をここに連れてくるから!!」
「??」

ゾロは元々他のビルで警備員のバイトをしていた。そこに現れたのがルフィで、お前が気に入ったから会社に入れと言い出したのだ。普通だったら怪しい事この上ないが、その頃のゾロは給料に不満があり有名な会社の名前だけで返事をして今に至る。

「お前も助かるって言ってただろ??」
「それはそうだが・・」
「何が不満なんだ?」
「・・・・。」

口下手なゾロは上手く離せなくて黙り込んでしまう。そんなゾロにルフィはニッコリ笑って、ゾロを引き寄せた。

「なっ・・」
「俺はゾロが側に居てくれればいいんだよ」

ルフィのいつもの口説き文句にゾロの顔が赤く染まった。
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