★文【パラレル】★

□※もっと甘えて
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グチッ・・・



日付も変わろうかという夜中の暗く灯りすら無い無人のオフィスに、二つの影が蠢く。
そして衣の擦れる音や濡れた音、息使いが聞こえてくる。

「ル、ルフィ・・・、も、ぉ」

息も絶え絶えなゾロがルフィの名を必死に呼んだ。

「ゾロ、ゾロ・・・っ」

ルフィもゾロの名を呟きながら、いたるところにキスの雨を降らしてゆく。
敏感な所を掠められ、ヒクンッとゾロの身体が揺れる。

“何で・・・こうなった??”

ゾロはルフィに流されていると知りながらも何故か拒む事が出来なかった。

“違うか・・・こうなることを、何処かで・・・望んでいた”

ゾロの奥の蕾にルフィの濡れた指が入り込んでくる感覚にゾロは甘い声をあげた。















時は遡り、この日の夕方へ戻る。
都会では帰宅ラッシュの中、ルフィは久しぶりに会社へとやってきた。高く聳え立つビルを目を細くして見上げる。
ルフィは見た目は子供だが、近い将来父親の後を継ぐ御曹司なのだ。おもちゃ会社でもあり、時たまルフィの柔軟な脳で産まれる言葉からヒット商品が多々出回っており次期社長であることは誰もが納得の上であった。
しかし、ルフィの父親は厳しくルフィを色々な会社に派遣させては下働きをさせていた。父親なりの息子に対する想いであることはルフィもわかっていたためどんな仕事でも請け負った。
そして2ヶ月ぶりに自分の会社へとやってきたのだった。

「ん〜〜!!!!やっぱりこの会社が一番だ!!」

心通った知り合いが沢山いるし、社員も皆良い奴ばかり。そしてなにより・・・

ルフィは一人の男を思い浮かべ、エントランスへと足を運んだのであった。










「んがーーー」
「・・・。」

待ちわびた愛しい人は、ビルの一番地下の庶務課の机に突っ伏して鼾をかいていた。他には誰も居なく、一人でずっと寝ているのだろうか?と思わせる仕事ぶりだ。
普通ならクビだと憤慨するものだが、惚れたら負けとはよく言ったものである。ルフィはゾロの寝顔を満足そうに眺めていた。
よくよく見ると、ゾロの机はとても散らかっていた。山積みになった書類に置いたままの沢山の工具。そして空になった栄養剤の瓶が4、5本転がっている。

「忙しいのかな・・・??」

ゾロの顔色も心なしか悪くみえる。ルフィは心配で汗の浮いた前髪を撫でた。

「熱ィ・・・!?」
思いの外熱かったゾロの体温に、ルフィはびっくりして顔を覗き込んでそして身体を揺すった。

「お、おい??ゾロ?ゾロ!!?」
「が、あ・・・・・・あ?」

揺さぶられてようやくゾロは重い瞼を持ち上げた。
歪んだ視点が定まり、一人の男の姿が見える。

「・・・・・・ルフィ?」

最近全く姿の見なかったルフィが今、目の前にいる。ゾロは夢ではないかと目を擦った。

「ゾロ大丈夫か??いつからそんな熱あったんだ」
「・・・・熱?」

言われて、ゾロは数日自分が調子が悪かったことを思い出した。
熱っぽい息を吐いてまた机に突っ伏す。

「あぁ・・・そういや、調子悪かったんだった」
「おいおい・・・;;」

思い出したかのように呟くゾロにルフィは呆れて、自分の羽織っていたコートをかけてやる。

「休めよ・・・そういうときは」
「・・・庶務課の仲間が、みんな・・・インフルエンザにかかっちまって」

そういえば巷ではインフルエンザが流行っているらしい。今年の冷夏が原因にもあがっている。

「だからって・・・お前一人でどうなる。お前もインフルエンザだったらどうすんだ」

皆にうつるんだぞ?
そうたしなめるルフィにゾロはバツが悪そうな顔で俯いた。

「・・・、悪ィ・・・」

でもちゃんと机の片隅にマスクがくしゃくしゃに置いてあるのをルフィは知っていた。
皆に広まるから。そんなのは口実で。本当はゾロに、無理をして欲しくなくて厳しい言葉をかけるのだった。

「もう定時とっくに過ぎてるぞ?帰るんだろ??」
「・・・警備」
「あ?」
「警備の仕事・・・これから」
「・・・何、言ってんだ」

ルフィは開いた口が塞がらなかった。まさか・・・この展開は

「警備員も・・・?」
「・・・インフルエンザで」

だから、俺が代わりに。
呟くゾロ。
はぁああ〜〜〜〜〜
ルフィはため息を吐くしかなかった。

「お前・・・人が良すぎるよ」

何でも請け負ってしまう性格にルフィは呆れ果ててしまった。




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