★文【パラレル】★
□お前と猫な俺と
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お前がどうしても飼いたいと言っていた猫が、俺の不注意で外に飛び出してしまった。
アパートのすぐ前は道路。俺は急いで逃げる猫に手を伸ばした。
パァッーー!!!!
聞こえたクラクションに気付くと同時に頭に酷い衝撃が。最後に微かに見たのは、お前の、真っ青な顔だった。
―お前と猫な俺と―
そして俺がやっと目を覚ますと、そこは変わらずアパートの前の道路だった。一つ変わったのは太陽が沈みかけ、朝から夕方になっていたことだけ。俺は痛むはずの頭を押さえようとして、違和感に気付いた。視界が異様に低い。それよりも。俺が見た自分の手は黒い毛に覆われた肉球だった。
“なんで!!!?”
キョロキョロと見渡して誰か通らないか、必死になって走ったが前足が後ろ足にひっかかり盛大に転けた。どう足掻いても自分が猫になってしまったことを自覚しなければならないらしい。チリチリと鳴る鈴と前足にある傷痕に、自分達の飼っている猫であることがわかった。
何故こんなことになったのか、無い脳みそで考えてみても全くわからなかった。もうすぐ日が沈む暗い道に佇むしか無かった俺の前に一台のタクシーがやってきてアパートの前に停まる。タクシーから降りたのは俺の愛しい恋人だった。
タクシーが走り去ると俺は急いでお前の元に駆け寄る。まだ猫の身体は慣れなくて、前のめりになりながらも必死に叫んで駆け寄ったが、情けない鳴き声しか出ない自分が歯痒かった。俺に気付くとお前は俺に視線を合わすかのようにしゃがんだ。疲れきった表情と真っ赤に腫れ上がった瞼が痛々しくて同時に嫌な予感に身体が震える。
「クロ・・・どうすればいい・・・っ」
俺を抱き上げて、静かに流れる涙も拭わずに息をつめた。
「ルフィが・・・ルフィが、意識不明に・・・っ」
目を見開いた俺に気付く筈もなく、ゾロは顔を猫の身体に埋めた。