★文【パラレル】★

□幸せな日
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パァンッ!!!!



「一本!!!!そこまで!!!!」

審判の威勢のいい掛け声と共に周りの大勢の生徒の歓喜の声が沸き起こった。歓声の中にいたのは胴着を身につけたグランド学園の男子生徒。名をロロノア・ゾロという。面を外して汗の流れた幼くみえる笑顔を見せた時には黄色い歓声が響き渡った。

「いつにも増して人気者だな、生意気な」
「しょうがないわよ。あいつ、もう学園の有名人TOP3に入るもの」

ゾロの出場する剣道県大会決勝の会場にグランド学園が選ばれたのだ。剣道界にも名を馳せるゾロの出身校というのもあって観客はいつもの2〜3倍にも膨れ上がり整理券まで配られる程だった。そしてゾロは見事全国大会への切符を手にする事となる。同級生のサンジや幼なじみのナミも勿論応援に来ていたのだった。倒れてしまった対戦相手に手を差し伸べ起こしてあげるゾロを見てナミは呆れたようにため息を吐いた。

「それでいて天然なんだから、ホントに厄介よね」

男女共に何故か好かれるゾロにその自覚は全くない。今でも対戦相手が熱い眼差しで見ている事など知りもしないのだろう。
そして仲間に連れられ、表彰台の一番上に誇らしげに立つゾロをもっと熱い眼差しで見ている人物がいた。モンキー・D・ルフィという少年である。隣にいた友達のウソップの肩をバンバン叩いて興奮状態だった。

「あいつ!!あいつ!!スゲー奴だったんだな!!!!」
「いて、いてぇって!!・・・たく、ロロノア先輩を知らねぇとはな」
「でもルフィはこの前転校してきたばっかなんだ。しょうがないよ」

ひょこっとチョッパーが顔を覗かしてウソップに話しかける。それもそうかとウソップは痛む肩を自分で擦った。高校一年生であるウソップ達にとって三年生のゾロ達は全くの雲の上の存在だったが、ルフィが友達のようにゾロの事をあいつあいつと連呼するのでヒヤヒヤしていた。

「スゲーな〜〜ゾロって」

人の多さにびっくりしたが、整理券を取った甲斐があったとルフィは穴が開くくらいゾロを見つめる。ゾロが気付いたのか唐突にルフィと目があった。ドキリとしたルフィを余所にゾロは満面の笑みでルフィに対して手を振ったのだ。

“うわ・・・”

知り合いとはいえ自分を見てくれるゾロにルフィは顔が赤くなった。ナミはゾロの視線の先にいた少年を見て驚き、ほくそ笑んだ。

「・・・そういう、事ね」
「ナミさん?どうかした?」
「ううん、ほら、片付け始めるらしいから私達出ましょう」

ナミはサンジの背中を押しながらまたゾロを見る。少し前に悩んでいた顔が嘘のように晴れやかだ。剣道に向き合えないと、珍しく弱音を吐いたゾロ。それがある日何事も無かったかのように純粋に剣道を楽しんでいたのだ。何かあるに違いないと思っていたが、

「まさかあんな少年だったとはっ」
「??なんの話?」

クエスチョンマークが頭に飛び交うサンジを尻目にナミは幼なじみとして悔しそうにけれど嬉しそうに会場を後にした。







「ぞ、ゾロ!!」

人が疎らになった会場の片付けをしていたゾロにルフィは声をかける。振り返ったゾロは嬉しそうにルフィに近付いてきた。

「よぉ、応援に来てくれてたんだな」

言ってくれたら良かったのに、とゾロは雑巾を床に置いた。
ルフィとゾロは数ヶ月前にある丘で出逢った。一度逢っただけなのに何故か意気投合してしまった二人は学園でも顔を合わすとたわいない会話をする仲になっていた。

「俺も昨日知ったんだ。知らなくて悪い」
「ははっ、別に気にしちゃいねぇよ」

屈託なく笑うゾロにまたもやルフィはドキリと心臓が跳ねる。

「そ、そうだよなはははは」
「?」

ルフィのわざとらしい笑いにゾロは首を傾げた。話かけようとしたら部活の仲間が声をかけた。

「ゾロ!!打ち上げ行くだろ?」
「あ、ああ後から行くよ」
「早くしろよ!!今日の主役はお前なんだからな!!」

ゾロはそう言う仲間に笑って頷いてまたルフィに向き合った。

「・・・そ、そうだ。おめでとう優勝」
「ああ、ありがとう」

それを言いに来たのにゾロを前にしたらころっと忘れてしまっていたルフィは顔が赤くなる。ゾロはそんなルフィを見て笑った。

「お前のお陰だ、多分」
「え?」
「お前と逢ってからなんか悩んでいた事とかどーでも良くなっちまってさ、真剣に剣道に打ち込めるようになったんだ」
「へ、へぇ」
「ありがとな、ルフィ」

その笑顔にルフィは思わず手を取っていた。
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