★文【パラレル】★

□除夜の鐘
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天下泰平の世




グランドジパングにも




もうすぐ新しい年がやってくる―・・・












ヒュンッ―

風を斬るように振り下ろされた刀と共に熱い汗が飛沫となって空中に舞う。
破壊僧として世界一の剣豪を目指し旅を続けるゾロは日々鍛練を欠かさず一人、暗闇でひたすら刀を振り続けていた。
背後に向かって振りかぶると同時に片方の刀を半回転させ、突き刺すように身体を前に押し出す。
踊るように繰り出される技と動きとの乱舞に荒い息遣いと森の中の静寂とが混ざり合い、僧の神経は極限まで研ぎ澄まされる。
頭の中で強い剣士を想像し、それに向かってがむしゃらに攻撃を仕掛ける。強い一撃を食らわそうとして僧はピタリと全ての動きを止めた。

「はぁ・・・はぁ・・・」

肩で息をしながらうっすらと目を開けると、刀の数ミリ先に微動だにしない麦わら親分の笑った顔があった。

「スゲー剣舞。いつ見てもゾクゾクする」
「・・・はっ、どこが・・・」

僧はゆっくりと刀を鞘へと仕舞うと腕で乱暴に汗を拭った。
年明けの近い雪の降る季節だと言うのに、僧は袈裟を脱ぎ上半身裸の状態で親分もいつも通りの半袖姿なのだから見てるこちらが寒くなってしまう。しかしその二人の周りだけは熱気で包まれているようだった。

「どうしたんだ?こんな夜に」

僧は不思議そうに親分を見た。
親分が僧に逢いに森の中へやってくるのはだいたい朝方か夕方のいずれかだったからだ。こんな夜中にやってくるとは僧も思ってもいなかった。

「ん?ああ、坊さんと年越ししてえなぁと思って」
「・・・俺と?」

首を傾げる僧に親分は勢いよく頷いた。

「おナミが言ってたんだ!!年越しは大事な奴と過ごす日だって!!」
「・・・そのおナミ達も大事だろ」
「あ、そっか」
「・・・・・・」

相変わらず噛み合わない会話に僧はため息を吐き、歩き出した。

「何処行くんだ?」
「身体洗いに行くんだ」
「ついていって」
「ダメだ」

言い終わる前にピシャリと僧に拒否され、親分の顔が膨れる。

「いいじゃねぇか!!こんな日ぐらい!!」
「・・・〜っ、こんな日だからだっ!!」
「意味わからねぇ!!」
「だから!!!!・・・・・・」

怒鳴りそうになり僧は何故か顔を真っ赤にしながら親分から顔を背けてボソボソと呟き始めた。

「・・・ついてきて・・・そのままヤるんだろ・・・っ」
「そりゃあそうだろ」

親分の魂胆は最初からわかっていたがあまりにもあっけらかんと言うので、僧は頭を抱えながら木に凭れかかってしまった。心配になって親分は僧の顔を覗き込む。

「・・・・・・ダメなのか?」
「・・・っ、ダメだ」
「・・・」

改めて僧に拒否されてしまった親分は今度は自分が項垂れてしまう。僧は熱くなる顔で親分をチラッと見た。多分そのおナミに年越しの過ごし方やら聞いたのだろう。
きっと聞いてすぐに自分の元へ来てくれたに違いない。
それがわかってても、でも・・・

「!!」
「?どうした?坊さん」
「いや、親分は俺と過ごしたいんだよな?」
「おお!!!!そうだぞ!!!!」

僧がきっと受け入れてくれると思い、親分は思いっきり跳び跳ねた。そんな親分の姿を見ながらクスリと僧が笑う。

「ちょっと待ってろ。仕度してくるから」
「??ああ、わかった」

もしかしてなんだかんだ言いつつ、僧もその気になったのではないかと、親分は待ちわびながら木に腰かけたのだった。
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