★文【パラレル】★

□I need you
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滅多に口には出せたもんじゃないけど


お前の事が大好きだ


いつだってお前を思わない日はないくらい






だけど、



俺にとってお前の世界は手が届かない存在で


釣り合わないんじゃないかという不安はいつでも俺の心の奥底に付きまとった


なぁ、ルフィ?


俺は馬鹿だからくだらない事しか考えられねぇ・・・例えば、


・・・お前の為に別れるなんて言ったら、


・・・・・・お前は俺を許さないだろうか












〜I need you〜












有名ビル群が立ち並ぶ街中に、「麦わらカンパニー」というオフィスビルがある。そんな会社の地下のオフィスでパソコンとにらめっこしているゾロの姿があった。


「・・・なんでフリーズするんだよ!!」


ガツンッ!!と乱暴にマウスを机に叩きつけてゾロはイライラと頭をかきむしった。机上には未だに片付かない書類の山と、フロッピーの数々。パソコンが古い型なので少しの容量オーバーでフリーズし、再起動。また立ち上げてはデータを保存する前にフリーズを繰り返してゾロはほとほと困り果てていた。
シンと静まりかえった室内はゾロ以外誰も居ない。チラリと時計を見ると、すでに日付は変わってしまっていた。


「・・・・・・ちっ」


そして時計の隣にあるカレンダーを見つめると、ゾロは舌打ちしてデータ処理中断を知らせる用紙をぐしゃぐしゃと丸めて捨てた。椅子から立ち上がると隅に置いてあるコーヒーメイカーから出来る、苦いコーヒーを一気に飲み干して息を吐いた。


「ハッピーバースデー、ルフィ」


ポツリと呟きゾロは低い天井を仰いだ。
カレンダーに表示されている日付は・・・5月5日だった。




















「え?彼氏の誕生日知らなかったの??」


その日の一日前、呆れたように驚いたナミが溜め息を吐くのを見てゾロはムッと眉間に皺を寄せる。


「・・・なんだよ。ルフィが教えてくれなかったんだよ」
「ふーん」


苦し紛れの言い訳なのかゾロの歯切れの悪さにナミはニヤニヤと笑みを溢す。


「まぁいいけど。きっとルフィなら誕生日パーティーで忙しいでしょ」
「パーティー??」
「会社の代表やその令嬢、御曹司が一気に集まる、私達には縁の無い話よ」
「へぇ・・・」


ナミには令嬢の友達がいるらしく、そちらから情報を仕入れたらしい。ゾロ自身ルフィとはここ3週間会っていないにしても、一言言って置いてほしかったと、ズキリと胸が痛んだ。


「・・・もう、」


ナミはゾロの表情を見るなり、鞄から紙を取り出してゾロに渡すと、受け取ったゾロは訝しげに紙を見つめた。


「・・・なんだこれ」
「パーティー会場よ。誕生日当日の」
「・・・・・・こんなのいらな」
「じゃあ捨てたら??」
「・・・・・・」
「言って置くけどね、カップルは相手の誕生日にそんな表情にはならないわ」
「・・・」


ビシッと指を突き付けてゾロに軽くデコピンをするとナミは笑った。


「一言ぐらい、言ってあげなさいよ。おめでとうってね」
「・・・ぉう」


オデコを押さえながらゾロはムッツリ呟いたが、ナミにはその表情に少し嬉しさが滲み出ているのを確認するとヒラヒラと手を振って会社を後にしたのだった。

















行き詰まっていた仕事がやっと終わり、深夜3時ごろにアパートに帰ったゾロはギシギシと音をたてる程に古い床に転がった。


「ふう・・・」


5月5日。
とうとうこの日が来てしまった。今日この日に有休を取った自分がつくづく滑稽に見える。机に無造作に置いてあるボロい部屋に似合わない綺麗に包装された箱。ルフィの事を考えながら、悩みに悩んだプレゼントまでちゃっかり用意していた。


「・・・」


しかし、これからどうしろと。
ゾロは箱を見つめながら髪の毛をガシガシかきむしる。


「早く寝るか・・・」


明日のパーティーは夕方かららしい。ルフィと連絡をとる手段のないゾロは昼間からそこへ向かおうと思っていた。何故なら他人に教えてもらった時間通りに必ず目的地に着かないからである。布団に潜りこんだゾロは嬉しそうなルフィの表情を思い浮かべ、同じように微笑んだ。






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