★文【パラレル】★
□もっと近くに
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ザァザァと降り注ぐ雨はこの冬に近い気候でより冷たく感じる。
仕事を終えたのはいいが傘を忘れてしまい急いでアパートに帰ってきたルフィはびしょ濡れになってしまった頭をタオルで拭きながら上着を脱いだ。そのまま奥の部屋をこっそり覗くと一つの布団にくるまる愛しい人と飼い猫のクロの存在を見つけてルフィは笑みを溢す。
「ただいまー」
「にゃー」
返事をしたのはクロで。
それにもまたルフィは可笑しくて笑みを溢した。ルフィが仕事から帰ってくる時間にゾロは起き出して自分の仕事に行ってしまう。この勤務帯が2週間も続いてしまうと流石のルフィも寂しいらしく、ゾロの傍に近付きじっと寝顔を覗き込んだ。綺麗に整った顔つきに男にしては長い睫毛。閉じられた瞳に早く自分を映してほしいとより近く顔を近付けた。隣ではお腹が空いたのかクロがルフィに摺り寄る。
「んん・・・、」
もう少し
「・・・・・・」
ゾロの瞳が開いた
「おはよ、ゾロ」
チュッ
この瞬間がルフィは一番好きだった。ゾロが目を覚まして一番最初にルフィの姿を映す時にキスすること。ゾロの一番最初を今日も貰った。
「・・・おかえり」
「ただいま、ゾロ」
寝起きでぼーっとしてはいるが、少し頬を赤く染めてゾロは改めてルフィに抱き付きキスを返した。幸せな時間を過ごすのも束の間、ゾロは布団から出てクロと共にキッチンへと消えてしまった。残されたルフィは不満そうに口を尖らせながらも同じようにキッチンへと足を運ぶ。立ちながらパンを頬張るゾロに声をかけた。
「今日早く帰ってくんだろ?」
「あぁ、何も問題無きゃあな」
「ふーん・・・」
「何かあったか?」
「別に?」
言ってからにやけそうになる顔を必死に隠した。今日だけは内緒で驚かせたかった事があったから。ルフィはこっそり携帯の日付を確認する。11月11日。ゾロは覚えてないだろう、自分の誕生日を祝うために。
「んじゃあ、行ってくる」
「お、おう!行ってらっしゃい!!」
素早く着替えたゾロが仕事に行ってしまったのを確認すると、そそくさとルフィは準備を始め出した。