★文【パラレル】★

□もっと近くに
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ゾロはようやく一日の仕事を終えて帰宅する準備に取りかかろうとした途端、会社の電話が鳴り響いた。電話を取った後輩のうんざりした顔でそれが仕事の電話ということを知った。


「・・・事故か?」
「もう徹夜決定っすよ、勘弁してくれー」
「・・・今日はついてねぇな」


車両の事故処理対応の仕事をしているゾロ達は電話で呼び出されたら必ず現場に駆けつけねば行けない。それがたとえ仕事終わりになりそうな時でも、だ。交代時間も後少しだったが他の社員の姿が見当たらないため、諦め半分で溜め息を吐きながらゾロは仕方なく後輩と共に工具を担いで事故応対車に乗り込み現場へと急いだのだった。














「遅い」


ルフィは一人ポツリと呟く。
時計はもうすぐ短針と長針が真上を向く時間を示そうとしている。すなわち、今日が終わるということ。机に並べられた料理の数々はほぼ冷めてしまっている。これらも今日のためにルフィがコックであるサンジから何度も教わった手料理ばかりだ。いつも料理が出来ないとバカにするゾロを驚かせてやろうと思ったのに。


「お前がいなきゃ、なんにも意味ねぇじゃねぇか・・・」


この料理も、二人で食べなきゃ意味無いのに。冷蔵庫の中にある、サンジがくれたバースデーケーキだって。


「早く逢いてぇよー、ゾロー」


早くお前の驚いた顔が見たい
早くお前の嬉しそうに微笑んだ顔が見たい
早くお前の料理に対する言葉がほしい
早く
早く


「ただいまー」
「おかえり!!ゾロ!!!!」


ガチャッと扉を開ける音にルフィは飛び出していった。そして、ルフィの姿を見たゾロが幸せそうに微笑む。


「ただいま、ルフィ」
「おう!!早く、こっち来い!!」


手を引っ張って急かすルフィに首を傾げながらもゾロは食卓に並んだ料理に驚いたように目を丸くした。


「なんだ・・・これ」
「しししし!!」
「スゲーご馳走じゃねぇか、どうしたんだ?」
「しししし、俺が作った」
「へぇ・・・・・・・・・って、は!!?お前が!!?一人でか!!?」
「おう!スゲーだろ!!」
「あぁ・・・」


自信ありげに威張るルフィを他所にゾロは座っていただきますと手を合わせた。熱い視線で見つめてくるルフィを前にゾロは少し形の崩れたハンバーグを一口、食べた。


「・・・うまい」
「だろ!!だろ!!よかった!!」


ガツガツとルフィとゾロは競うように食べまくり、食卓いっぱいに並んでいた料理もあっという間に無くなってしまった。満足そうにお茶を飲むゾロにルフィはニヤニヤしながら、冷蔵庫からケーキを取り出した。チョコレートで出来た板には可愛らしい文字でHappyBirthdayと書かれている。


「ゾロ!!!!」
「ん?・・・あ、」
「誕生日、おめでとうな!!!!」
「あぁ、そうだった、・・・」
「ゾロ?」


思い出したようなゾロにしてやったりのルフィだったが、ゾロの様子がおかしいことに気が付いた。俯いたまま、肩を揺らしている。


「・・・泣いてんのか?」
「バカ!!!!誰が泣くか!!」


そうは言うもののうっすらとゾロの瞳が光ってた事は黙っておくことにした。


「すっかり忘れてた」
「だろ?そうだと思ったんだよー!!でもさ、俺給料日前で金が無くてさ・・・ちょっと前まで俺入院してたし、プレゼント買えなかった・・・ごめんな」
「ルフィ」
「ん?」


ゾロはケーキを頬張っていたルフィの口に付いたクリームをキスをして取った。


「ゾ、」
「お前がいれば、いい」


ゾロはガタンと机から無理矢理ルフィを押し倒し、深く口付けをする。


「ゾロ、」
「お前がこうして近くにいれば・・・幸せなんだ、俺ァ」
「バカだなぁ、いつでも俺はゾロの一番近くにいるじゃねぇか」


その言葉にフッと笑みを溢し猫のように摺り寄るゾロを強く抱きしめ、ルフィは首筋に顔を埋めた。激しくなる二人の呼吸に、クロはそそくさと寝室へと逃げていった。




交わる二人は同じ事を思っていた





今日もとても幸せで、





明日ももっと幸せでありますように、と・・・














HappyBirthday!!ZORO!!!!



次ページあとがき☆



2010年11月11日
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