★文【パラレル】★

□※大輪の花
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世は泰平



蝉も鳴き出し、グランドジパングにもとうとう夏がやってきた。

夏といえば・・・そう、グランドジパングでも夏祭りが毎年あり、城下町にも屋台やら店などが広い道に並び始めていた。
人々も活気付き、皆一様に明後日に行われる花火大会に向けて賑わっている。

「おぅ!!!!サンジ!!昼飯五人前!!」

ガラッと食事処風車の戸を開けたのは、この城下町の治安を守る、ルフィ親分であった。
最近は悪さをする輩もめっきり少なくなり、今のところ屋台の組み立てやら色々手伝って一日を終えている。
台所からサンジが顔を出した。

「お〜〜ルフィ親分。どうだ、進んでるか?」
「おぅ!!もう屋台は明日から出せるみてぇだからな!!!!今日で俺の手伝いも終わりだな」
「ご苦労さん、昼飯は俺の奢りだ」

そう言ってサンジは特大のどんぶりをルフィ親分の前に置く。

「うひゃ〜〜♪♪いただきま〜〜す♪♪」

言うと同時に美味しそうに食べ始める親分を満足そうにサンジが見ていた。

「ほぉおぃや、ほはみは??」
「・・・飲み込んでから話せ」
「・・・・ごくん・・そういや、おナミはどした??」
「ビビちゃんに呼ばれてお城に行ってるぜ」
「へ〜〜ビビにも最近逢ってねぇなぁ」

また逢いたいなぁ、とルフィは何故かビビと・・あのお坊さんを思い出していた。

“・・・元気かなぁ、あいつ”

以前あの橋の上で別れて以来噂は耳にするものの、僧の姿を見ることは無かった。何処で何をしているかも知る術が無かった。

「・・・また、逢えるかなぁ」
「・・・・??城に行ってくりゃいいじゃねぇか」

てっきりビビの事を言っていると思ったサンジは訝しげに親分を見る。そんなサンジに小さく息を吐いて、親分はどんぶりを机の上に置き、ごちそうさん!!と手を合わせた。

「あと少しで組み立て終わるんだ、もう行くわ!!おナミによろしく!!」
「おぉ、また来いよ」

親分は来たときと同じように走って出ていってしまった。


















それからしばらくして、道を歩いている親分の姿があった。予想外に手伝いが早く終わったらしく片手には林檎飴を持ち、何とも満足そうであるが親分としてはもっと手伝うつもりだったので暇になっているようだ。

「ピーマン達も手伝いらしいからな〜・・・今から何しよ」

遊び相手も居ないルフィはすることも無くただブラブラと町中をひたすら歩くだけであった。

「にゃあ」
「あ??」

突然の猫の声に親分は振り返る。道端にいる黒い猫が親分のほうをじっと見ていた。

「見ない猫だな・・・」

何故か気になって走り出した猫を追って親分はどんどん走る。そして猫は小川にある橋の下に入ってしまった。ルフィは当然のように橋の下を覗く。







「あ!!!!」
「・・・あ??」

なんとルフィが覗いた橋の下には、黒猫になつかれた僧の姿があったのだ。予想外の自体と久しぶりに見た僧の姿に親分は暫く絶句してしまう。振り返った僧も親分を見たまま同じように、唖然としたままピクリとも動かなかった。

「あ・・・でもなんで、ここに」
「・・・・///」

僧は猫の首元を撫でながら、下を向いた。その顔は橋の下の暗い中でもわかるほど赤く染まっていた。親分の視線に参った僧はもごもごと口を動かし始めた。

「・・・たんだよ」
「・・・・え??」
「〜〜!!だから迷ってここに戻って来ちまったんだよ!!!!」

突然叫ぶので傍にいた黒猫は驚いてまた何処かへ走り去ってしまった。僧は言い終わると顔を反対に向いてしまう。

「・・・・そうか」
「・・・・。」
「良かった!!」
「え・・・?」
「俺、坊さんに逢いたかったからさ!!!!」
「・・・・あ、ぁ・・?」

そう言って眩しいくらいの笑顔をみせる親分に僧の心臓がドクリと脈打つ。

“何、喜んでんだ、俺ァ・・・”

熱を感じる頬を夏のせいにして僧は横目で親分を見つめていた。







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