★文【パラレル】★

□その首筋にKissを
2ページ/5ページ



「んじゃあ、ゾロ!!いってくるな〜♪」
「・・・おぉ」

都会から少し離れた下町の古い木造アパート。そこの一室から明るい声が聞こえたと同時に思いきり外に飛び出した少年がいた。黒髪に頬の傷跡が特徴的な、名をモンキー・D・ルフィと言う。両親を幼い頃に亡くし、唯一の血の繋がりのある兄は海外へ行っていた。そしてある事件をきっかけに自分がバンパイアハンターの血を受け継いでいることを知る。しかしながら、敵である筈の吸血鬼との共存を望んでいる変わった少年だ。

「おい、鞄持たなくてどうすんだ」

同じ部屋からガチャリと一人の男が顔を覗かせた。鮮やかな緑髪に左耳には三連ピアスという目立つ風貌の青年はロロノア・ゾロという。彼こそ数少ない吸血鬼の末裔そしてその中でも一番力を持つ“純血”の血が流れているのだ。ルフィとは同じ事件がきっかけで出逢い、惹かれ合ってそして今でも同じ家で同棲していた。

「なはは、悪ぃ悪ぃ」
「ったく、これで何度目だよ」

笑顔で戻ってくるルフィに何気なく学生鞄を渡してゾロは、手を振りながら遠ざかるルフィの後ろ姿を見送りその場にしゃがみこんだ。

「マジで・・・ヤバい」

その呟きは誰にも届く事は無かった。




ゾロはそのまま一直線に寝室のベッドへ向かい、寝転ぶと毛布を被った。ルフィが学校へ行っている昼間、やはり吸血鬼故か夜型のようでゾロはずっと眠っている。しかし、ゾロは“覚醒”してしまってからその症状は酷くなる一方であった。そして更に不調は重なる。今まで普通に食べていた食事が美味しく感じなかったり、ルフィが家にいると気が張りつめて疲れたり。そこまで考えてゾロは頭を使うのも億劫になり、毛布を頭まで被ると欲望のままに眠気に身を委ねる。

“シャンクス・・・俺はどうしたらいい。まだ人間を捨てたくない”

身体を動かすと耳元でシャラッとピアスが鳴った。前にシャンクスから聞いた。本当はミホークがこのピアスをゾロに渡していたのだと。

“父さん・・・父さんも、こんな気持ちだったか・・・?”

厳しそうな父親でも、吸血鬼であることに悩んでいた頃はあったのだろうか。それとも馬鹿なことをと嘲笑うだろうか。
日に日に落ちていく体力にゾロは眉を寄せた。














夕方になり、友達と別れたルフィが学校から帰宅する。そしてアパートの入り口にある郵便受けに一通の手紙が入っていたので無造作に取り出した。差出人の名前は、

「シャンクスだ!!」

シャンクスとはゾロと同じ吸血鬼でゾロの父親である吸血鬼のミホークと共にルフィの兄のエースを守る為に海外へ旅に出ている。手紙はルフィ宛だったのでルフィは嬉しそうに封を開けて読みながらギシギシ五月蝿い階段を登った。便箋には最近の皆の様子や、エース達が行った色々な国の事、そして・・・自分の部屋の目の前に来たときに、ルフィはピタリと動きを止めた。手紙の最後に書いてある内容を真剣に見つめなにやら考えながら、扉をしばらく眺めていた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ