★文【パラレル】★
□その首筋にKissを
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ガチャッと扉を開けてルフィは中を覗いた。
「ただいま〜〜・・・ゾロ〜〜?」
シンと静まり返った暗い室内はまるで一人で暮らしていた昔に戻ったようでルフィは不安になる。
「ゾロ?」
真っ先に向かったのは一番ゾロがいる確率が多い寝室。そのベッドの上で毛布が丸く膨らんでいるのが見えてルフィはほっと息を吐いた。今まで寝ていても電気はついていたのにと不思議に思ったルフィは日が沈んで真っ暗な部屋の電気を付けてゾロに歩み寄る。きっと頭だろうと思われる場所にそっと手を置いた。
「ゾロ?まだ寝てるのか?」
しかしルフィの問いかけにゾロからは何の応答もない。少し揺さぶると、毛布の隙間からダランッと力無く右手が姿を見せた。嫌な予感にルフィが毛布を剥ぎ取るとゾロは眠っているようだったが、顔色が悪い。焦ったルフィは無理矢理ゾロを揺さぶって叫んだ。
「ゾロ!!おい!!ゾロっ!!!!」
「・・・っう、」
目を覚ましたゾロの両目は蛍光灯の光に照らされて紅く輝く。その宝石みたいな深い輝きにしばしルフィは目を奪われた。しかし、すぐに我に帰り、ゾロをゆっくり起こした。
「どうしたんだよ、調子悪いならそう行ってくれれば俺学校休んだのに」
「・・・」
「飯、食うか?お粥とかなら」
「いらない」
「そ、そうか?じゃあ水とか飲まな」
「何もいらない!!ほっといてくれ!!」
いきなりのゾロの剣幕にルフィはびっくりしてそのまま寝室から追い出されてしまった。ガタガタと開けようとしてもビクともせずにルフィはドンドンと扉を叩く。
「ゾロ!!何、意地はってるんだよ!!悪化したらどうすんだ!!?」
「・・・っ」
扉越しに聞こえるルフィの叫びにゾロは扉を背にズルズルと崩れ落ちる。ハァハァと息切れが酷く、心臓の音も尋常ではないほど早い。あまりの苦しさに踞るが、こんなことをしてもどうしようもないことはゾロが一番良く知っていた。
「・・・まだ信用出来ねぇのか」
ルフィが扉越しに語りかけてきた。
「・・・」
「そりゃあ、俺料理も出来ねぇし・・・何もしてやれねぇけど」
「・・・」
「もっと俺に頼ってくれよ・・・頑張るから、俺。チョッパーもいるしだから・・・無理、するな」
ゾロはきつく目を瞑る。静かな室内にゴクリとゾロの喉が鳴った。
「ルフィ・・・俺・・・」
「え?どうした?ゾロ?」
「俺・・・・・・っ」
ルフィは扉に耳をつけ消えてしまいそうなゾロの呟きを確実に拾おうとした。
「俺・・・お前の血が、欲しい」
ゾロの悲痛な声色にルフィは目を見開く。ゾロは言ってから激しく後悔した。終りだ、全て。血を欲していた自分を受け入れたくなかった。シャンクスから聞いていた“覚醒”は自我を無くし、血を欲するがままに暴走してしまう事もあると。一度飲んでしまえば自分もそうなってしまう事が怖くて今まで誤魔化していた。
「悪ぃ・・・ルフィ」
「・・・」
「もう・・・誤魔化して生きれねぇらしい・・・」
そしてそれがルフィとの別れにもなるであろうことは容易に想像出来た。自分の手でルフィを殺してしまうくらいなら、自分が死んでも構わない。もう、この家を出ていくと言おうとした時、ルフィの低い声が聞こえてきた。
「ここを開けろ」
「・・・・・・嫌だ」
「開けろっ!!!!」
「嫌だ!!!!」
ガコンッ!!!!
痺れを切らしたルフィは扉の鍵を力ずくで壊して扉を開けてしまう。
ルフィから距離を取ろうとしたゾロをルフィは無理矢理抱きしめた。反動で床に倒れてゾロを押し倒した体制になってしまう。あまりの近さにゾロがルフィを押しやるが、ルフィはビクともしなかった。
「飲めよ、俺の血」
ルフィの発言にゾロは目を見開いてルフィを凝視する。
「なに言っ」
「お前になら、やってもいい」
「・・・っ!!」
ゾロはまたゴクリと喉を鳴らした。両目が深い紅色に変わる。
「・・・ルフィっ」
「うん、大丈夫だ。ゾロ」
優しくルフィはゾロを抱きしめる。徐に学生服の襟を剥がすゾロにルフィは緊張して身体を強張らせる。ルフィの首筋が露になる。
「ゾ、ゾロ?」
「・・・なんだ」
「別に首じゃなくてもいいんじゃね?手首とか腕とか」
「・・・これが吸血鬼の礼儀だ」
ポツリというゾロにルフィは心臓をバクバクさせる。
“礼儀か何か知らねぇけど近すぎる!!”
ゾロの荒い吐息が首筋にかかりルフィは汗を流した。細い牙が首筋に差し込まれる感覚が気持ちよくてルフィは身体を震わせた。