★文【パラレル】★

□幸せな日
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「え、」
「あ、ああ!!ごめんっ、打ち上げあるんだろ?」

焦ったルフィはぱっと手を離してゾロを見るとゾロの顔は茹で蛸のように赤かった。

「ゾロ?」
「・・・悪い、なんでもねぇ」

そう言うとすぐにゾロはその場にしゃがみこみ雑巾を手に道場の床を拭き始めた。ルフィは手持ちぶさたになってしまい、ゾロを見ている事しか出来なかった。
ゾロは突然の事に何も言えなかっのだ。ゾロは気付いた時にはルフィの事を目で追っていた。学園内で偶然逢うのもゾロがそう仕向けていたから。何故かはわからない。ただその真っ直ぐな眼差しが好きで、曇りの無い笑顔が好きで。始めて逢った時からお前の事を。そこまで考えて拭いていた手を止める。考えだしたらきりの無い思考にゾロは首を激しく振った。

「ゾロ?」
「え、?」
「手伝うよ、疲れてるだろ?」
「いや、もう終わるから・・」

そこまで言って漸く気付く。自分達以外に、人がいたことを。ぐるんっと振り返ってヨサクとジョニーがビクリと動きを止めた。

「あ、あっしらも打ち上げ行こうかな〜〜」
「そうだな!!ここまでやれば充分だ!!」

わざとらしく掃除道具を片付け颯爽と飛び出していった二人にゾロは絶句する。俺としたことが・・・全部聞かれてた・・・っ。あまりの恥ずかしさにまたもや顔が真っ赤に染まり、ゾロは髪をぐしゃぐしゃとかいた。

「くそ・・・っ」
「?ゾロ??」
「あ、いや・・・俺、」
「もう行くのか??」

ルフィの言葉が寂しそうに聞こえたのはゾロの気のせいだろうか。

「そうだな・・・行くよ」
「そっかぁ、じゃあ俺も帰ろ〜っと」

そう言うルフィは振り返り越しにゾロに呟いていた。

「次はっ・・・」
「え?」
「次は、俺が祝ってもいいか?」
「え・・・」

顔が見えない。ゾロは今無性にルフィの表情が見たかった。

「お前の事、祝ってやりたい」
「・・・」
「だから全国大会は、必ず勝て」
「・・・」
「約束だ、いいか?」
「・・・わかった。」
「しししし!!」

嬉しそうに笑ったルフィにゾロは恥ずかしそうにつられて笑う。

「じゃあ、おめでとうだけ言ってくれ」
「?優勝おめでとう」
「おめでとう、だけ」
「・・・おめでとう」
「ありがとう」

それを聞いて満足そうに背中を向けるゾロにルフィは思わず叫んだ。

「おめでとう!!ゾロ!!」

ゾロはそれに手をあげて応え、道場を後にした。ルフィは激しくなる鼓動に思わず走り出して帰っていったのだった。
















「遅かったな、ゾロ」
「悪ぃな」

仲間が待つ料理屋にゾロは入る。馴染みのおじさんの経営している店で今日はゾロの為に貸し切りだという言葉に甘えて打ち上げ会を楽しんだ。

「そいえばさぁ、いい加減掃除はいいんじゃねぇ?」
「そうだな、ゾロは真面目過ぎるんだ。一年が居るっていうのに」

同じ三年の仲間にねちねちと言われてゾロはそれを鼻で笑った。

「毎日汗で汚してるからな、掃除でもしなきゃ汗臭くてたまんねぇぜ」

そのセリフに他の仲間が盛大に笑う。しかしゾロの頭には先生の言葉しか巡っていなかった。

“掃除を怠るのは、剣道の命を汚しているのと同じだよ”

床も胴着も竹刀も、全て命だ。
その言葉に従って掃除を怠った事は無い。それが自分の強さの秘訣だと信じて。でもそれを他の奴には教えたくは無かったのだ。
ひっそり笑ったゾロに店の女将さんが料理を持ってきながらゾロに話しかけた。

「誕生日に優勝しちゃうんだから今日は2倍に祝わなきゃね!!」
「おい、余計な事」
「ゾロの兄貴今日誕生日なんっスか!!?」
「え、本当かよ」
「まじで??」
「なんだよ言えよな!!」

いきなり仲間達にもみくちゃにされゾロは困ったように引き剥がす。

「だ〜〜も〜〜、いいじゃねぇか!!今更誕生日なんて!!」
「水臭いじゃねぇか!!じゃあ俺達が一番最初に祝ってやるよ!!」
「はは・・・ありがとさん」

ゾロは食べ物を飲み込んでカレンダーを見つめた。日付は11月11日。

“悪ぃな・・・一番最初は、もう貰ってんだ”


あの明るい笑顔を思い出して。

ゾロは笑った。









「え〜〜っきしっ!!」

盛大にくしゃみをした少年は数日後、二年にいるオレンジ髪をした女性にゾロの誕生日を教えられ仰天したのは言うまでもない。







END



HappyBirthday!!Zoro!!


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2009年11月11日
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