サイト一周年企画
□桜島
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その頃・・・
ザクザクと島の林の中を突き進むゾロとルフィの姿があった。
「ゾロ〜〜??どこまで行くんだ??」
「ん?・・・・・・秘密、だ」
「なんだよ〜〜教えろよ〜!!」
ブツブツ言いながらもひたすら進むゾロの後ろ姿を必死に追うルフィ。
ふと、フワリと吹き込む暖かい風に乗ってその視界を横切った一片の花弁。
「お?」
ちょうどルフィの服に張り付いたそれに目をとられてしまい、急に立ち止まったゾロの背中に思いきりぶつかってしまった。
「いてっ!!ゾロ!!急に止まんな・・・よ・・・」
怒鳴ったルフィの声が、ある光景を見て小さくなる。
ゾロの背中越しに見たのは川沿いに立ち並ぶ薄桃色の花をつけた木々だった。
あまりにも幻想的で、何処かで見たことあるようなしかし見たことのない美しい光景にルフィは目を輝かせた。
「・・・スゲー」
「・・・この木は春のような暖かい気候の時にしか花を咲かせない。俺のいた村は季節があったけどな・・・グランドラインじゃ春島しか見れないだろうな」
懐かしそうに目を細めて笑うゾロを見ていたルフィは一緒になって微笑んだ。
「そうか。思い出の木か」
「あぁ」
頷きながらゾロは手に持っていた風呂敷で包んだ箱を徐にルフィに手渡す。ルフィは不思議そうにその箱のようなものを受け取る。
「なんだ?」
「弁当」
「弁当!!!!」
食べ物と聞いた途端、目を輝かせるルフィにゾロは笑いながら木の下までやってきた。
「風情だな・・・」
「なんふぁ?ふへへっへ」
「食べてから話せ」
早速弁当を空けて口に押し込むルフィにゾロは呆れたように見つめていた。ゴクンと音がしたかと思うといつの間にかゾロのすぐ隣にルフィはいた。
「なんだ?ふぜーって」
「・・・趣があるって事だ」
「なんだ?おもむきって。食べ物か??」
「・・・」
またまた呆れたのかゾロは口を閉ざす。ルフィは一瞬怒らせたかとゾロを見たが、顔はとても穏やかで少しほっとした。
「ここ、座れ」
土手に腰掛けたゾロはポンポンと隣を叩く。素直に座ったルフィはゾロが何をしたいのか理解出来ずに頭にクエスチョンマークを浮かべたままだ。それを察したのかゾロは苦笑して木々を見上げた。
「・・・俺の村では毎年桜が咲いたらその木の下で、皆で弁当持ち寄って、酒飲んで、ドンチャン騒ぎだったな」
「さくら?」
「この木の名前だ」
「ん〜〜・・・どっかで聞いたことあるな〜〜・・・」
それがチョッパーの口からとはゾロは言わなかったが、何故か他の皆には内緒にしておきたかったのだ。ルフィに最初に教えていたら仲間全員、下手したらこの島の住人集めて宴だっただろう。
「静かな花見のほうが、俺は好きだな」
「へ〜〜」
「後で皆にはちゃんと言うからよ」
「・・・」
「もう少し、ゆっくりしてこうぜ。弁当一人で食うな・・・よ・・・」
話をしている途中にゾロの視界をルフィの顔が占領し、そのまま唇を塞いだ。
「・・・っ」
「・・・」
フワフワと暖かい風が二人の間を通っていく。とても、とても長い時間そうしていた気がしていた。
「ふぜーあったか?」
「は?・・・・・・・・・ぶっ、くっくっく・・・」
ルフィの言葉に「風情」は似合わないらしい。折角の良い雰囲気をゾロ自らぶち壊してしまった。
「なんだよ!!俺今真剣だったぞ!!」
「嘘つけ・・・っ、ふ、ふぜーって・・・くくく」
あまりの爆笑ぶりにルフィはゾロの隣に置いた弁当を取り上げた。