彩雲国
□決断 〜想いの果てに待っているのは…〜
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『紅家直系の姫はあなたの後宮に入るわ。』
秀麗のこの言葉を聞いた瞬間、劉輝は自分自身に絶望した。
…自分の甘さと、弱さに…。
劉輝は『紅秀麗』という一人の女性を愛していたはずだった。だから今まで、待ち続けることが出来た。
しかし藍州で自分の命が尽きるまで王であり続けると決めた。そして藍州からの帰りに、『桜が咲くまで』という期限付きの賭けをした。
「望んでいたのは『秀麗』だとわかっていたはずなのに、余のしたことは…。」
劉輝は選んでしまった。
『紅秀麗』ではなく、『紅家直系の姫』を。
そして同時に秀麗のこれから歩むべき道を、劉輝自身が閉ざしてしまった。
「余は秀麗の大事な物を奪うことしか、出来ないのだな…。」
秀麗の後宮入りは官吏達によって賛否両論であった。
特に御史台に在籍している官吏や御史大獄を見ていた官吏、元冗官からは非難の声も上がった。
「余は楽な道を選んでしまったな…。」
いつだったか楸瑛にも言われた。
『怠けようとしているのではないか?』と。
怠けとは少し違うかもしれないが、結果的には同じであった。
妃として秀麗を自分の側に置いておくということだけは…。
この数日後、秀麗は忽然と姿を消した。まるで人間の男に連れ去られた、薔薇姫のように…。