彩雲国

□望むのは貴女の幸せ
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『紅秀麗が官吏を辞めて妃となる。』

この噂が城内を駆け巡って早数日…。

お嬢様はまだ劉輝とちゃんと話をしていない。

だがその話題に対してのお嬢様の答えは『是』であるだろう。

お嬢様は聡い。考える必要もなく、すぐにこの答えに気付くだろう。

「お嬢様と劉輝が結婚…か…。」

まったく考えなかった訳ではない。

お嬢様はこの国で一、二を争う名門貴族の姫。王の妃になってもおかしくない血筋のお方。だが結婚などという話が出ても、それはまだ先の話だと思っていた。

しかし事態は急変した。

吏部尚書・紅黎深の解任により、紅家の官吏は一斉に出仕拒否となってしまった。

その打開策のために朝議も開かれたが、そこで思わぬ選択肢が出てきてしまった。

それがお嬢様との結婚だった…。

劉輝には王としての自覚が生まれた。すなわちそれはこの国の為に尽力しなければならないという義務でもある。ならばより良い選択をするのは当然だ。

別に根本的に結婚に反対しているわけではない。むしろ劉輝ならばきっとお嬢様を幸せにしてくれるだろう。しかし…。

「こんな形の結婚で、本当に幸せになれるのか…?」

今までお嬢様の幸せの為に害を及ぼすものは徹底的に潰してきた。

それはお嬢様のことを『大切』に想い、そして『愛しい』と想っていたからだ。

そしてそれは今でも変わらない。

だがその気持ちは届くことがないのを知っている。

相手は名門貴族のお嬢様、自分はただの一武官。結婚することなど有り得ない。

その可能性があるとすれば、それは『私』ではなく『清苑』の方だ。

「こんなことを考えても仕方ないのにな…。」

だがこんなことを考えてしまう自分がいるほど、今回の結婚に納得がいかない自分がいるのはたしかだ。

『世界で二番目に静蘭が好き。』

そう言ってくれた貴女。
貴女の幸せをだれよりも望んでいます。だから望まない結婚などしないで下さい。

…こう言えたらどれだけ楽になれるのか…。

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