dear

□視線の先に…
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プリノが魔王に就任してから数日…、プリノと紅が付き合っているという噂が軍内を巡った。

以前から似たような噂が流れていたが今回は事実であると判明したため、それに嘆き、涙する男性陣はかなり多かった。

『まぁ、僕も人のことは言えないんですけどね…。』

そう、キャロルもプリノのことを好きだった。

でもその想いは隠し続けていた。

と言うより隠し続けなければならなかった。

キャロルは気付いたからだ。

紅とプリノが互いに惹かれあっていることに…。


プリノの犬化…、もといライカンスロープの呪いを解くために人間の大陸へ向かい、そこで多くの時間を共有した。

そうやって過ごしていく中、キャロルはプリノに惹かれている自分に気付いた。

そして気付けば、キャロルの視線の先にはいつもプリノがいた。

こうしてずっとプリノを視線で追っていくうちに気付いてしまった。

プリノの視線の先にいる人物に。

それが自分の相棒でもある紅だと言うことに…。

『プリノさんが紅さんを…。』

その瞬間、キャロルは自分の想いを秘め続けようと決めた。

プリノに告白するという選択肢をそのとき、捨ててしまった。

理由はただ1つ。

プリノを苦しませたくなかった。

『せっかくプリノさんが新しい恋をしているのにそれを邪魔するのはなぁ…。』

プリノに対して何の感情も持っていなければ、冷やかしたりすることは出来るだろう。

でも今のキャロルにはプリノに対する恋情がある。

その感情がある以上、それすらも邪魔と思ってしまう自分がいた。

ならばその感情を捨てればいいと思う人も居るかもしれないが、それは出来なかった。

その程度で捨てられる感情なら、最初から好きだなんて思わない。

だからキャロルは決めた。

新しい恋をするまでは、この想いを胸に秘め続けようと…。


「もう、紅の分からず屋!」

「何だと!?」

「はいはい、そこまで。紅さんもプリノさんも、痴話ゲンカなら余所でやって下さいね〜。」

『痴話ゲンカなんてしてない(です)!』

こんなことは日常茶飯事だ。

いつもいつもこうやってケンカをして…。

でもこんな日々を送るのもいいのかもしれない。

僕の好きな人と大切な人が今こうして、幸せそうにしている空間に居られるこんな生活も…。

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