Vitamin
□Dear my students
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3月にB6達が卒業して間もなく、悠里のもとに6通の手紙が届いた。
「これ…、B6たちからだわ…!」
その手紙には6人、それぞれの思いが込められていた。
「ふふっ、みんないつの間にこんなの書いて…。」
悠里はその一通一通を、まるで宝物に触れるかのように、大切に読んでいた。
それを読んでいるうちに、不意にB6との思い出が蘇った。
父親との確執があった翼。
サッカーを辞めてしまいストリートに明け暮れてしまった一。
母親の愛情が無かった瞬。
イラストを書いて、それを否定されていたりした悟郎。
器用にこなしてしまうが故に、努力の意味を理解できなかった清春。
人との触れ合いを、脅威と感じていた瑞希。
悠里にとっては、とても厄介で、でも同時にとても大切な生徒達。
「まさか、みんなにこんな風に思われてたなんて…。でも、感謝するのは私なんだけどな…。」
悠里はずっと思っていた。
彼らと出会わなければ、きっと教師という仕事に対してここまで誇りを持つことは、出来なかっただろうと。
実践経験もまだ浅く、正直自信も無かったときもあった。
だが、相手が彼らだったからここまで頑張れたのも事実だった。
「ありがとう、みんな…。あなたたちは、私にとってとても大切な生徒達だわ。」
新しく迎えた4月。
悠里は再び、教壇に立っていた。
B6への感謝の気持ちを胸に秘めながら。
fin