アイロニーサンサーラ

□廃墟の残骸
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―――ズル・・・ズル・・・


地面を何かが擦れていく音だけが辺りに響く。
この辺りで息をしているのは自分と、背中のコイツくらいなものだろう。
利き足を軸にして引きずるように歩くせいか、それとも足に纏わりつくボロ布のせいなのか、音が鳴り止む事は一向に無い。
背中で苦しそうに息をする、名前も知らない仲間を刺激を与えないように背負いなおす。


「頑張れよ、もう少しだ。」


何度言ったかも分からない励ましの言葉に、背中から謝罪と感謝の声が聞こえてくる。
何度となく繰り返したこのやり取りに終わりなど来るのだろうか。
一瞬とはいえ弱気になった銀時の心情を汲み取ったのか、背後から苦笑が漏れる。


「銀時、もういい、俺は、もう、駄目だ。」
「馬鹿野郎、お前が弱気になってるんじゃねぇよ。」
「いいんだ、分かるんだ。・・・もう、俺は・・・長くない。」


遠くを見ながらつっかえつっかえ喋る。
その言葉に唐突に不安が込み上げ、歩く速度を上げた。
強い風と共に砂埃が舞い上がる。
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