Gift&リク

□20000hit記念企画
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#夢見引力(Sakamoto×Gintoki)




「あれ」

呟いた言葉は何処かぼんやりした音の余韻を残して消えていく。
それに何処か違和感を感じたが深く突っ込んで考えないことにした。
そんなことよりもここが何処なのか、それでいて何をしていたのかをまったく覚えていない現在の状況をどう打開していくか。
とりあえず今はそれだけが重要である。

「あー…わっかんね」

視界の隅に映っているのは何処かで見たような広い公園に、隣で微かに揺れるブランコ。
ここまで確認したところで初めて自分がブランコに乗っていたことに気づいた。

「誰か、いたのか?」

揺れるブランコに問いかけるが当然返事が返ってくるはずもなく、銀時は深い溜め息をついた。
足元には自らから伸びた黒い影が夕陽に照らされてその存在をさらに主張させている。

「なんだかなぁ」

誰も居ない知らない場所に一人きり。何だかどうしようもなく虚しさを感じてブランコをこいだ。
キイキイと耳につく金属音を放ちながら自然、空と近づく(否、そう感じているだけかもしれないが)体にどこか安らぎを感じて目を瞑る。
しばらくそうしてブランコを堪能していると、突然向こうの方でガタンと大きな音が聞こえてきた。

「シーソー…?」

音のした方を探るように見れば、先程までは水平だったシーソーが片方に傾いている。

「誰か、いるのか?」

呟いた言葉に誰かの笑顔が重なった。



+++



「銀さん!」

新八の焦ったような声に目を開くと勢いよく体を起こす。
きょろきょろと辺りを見渡すと、ほっとしたように新八が息をついた。

「よかった・・・さっきからずっとうなされてて、心配したんですよ」
「うなされてた・・・?」

そこまで悪夢を見た覚えは無いのだが。
新八は首を捻る銀時にすっかり安心したのか、お茶を入れてきますねと台所の方へ歩いていく。
それを眼で追いながら、そういえばここまで夢の内容をハッキリ覚えているのは珍しいことに気づいて更に首を捻る。
揺れるブランコ、傾いたシーソーに一人きりの公園。
それらが何を表しているのかは分からないが、何故だがもやもやと胸の中に留まったまま消えてくれない。
顎に手を添えて本格的に悩みだした瞬間、

――ガンガンガン

「あ?」

扉を叩きつけるような音と同時にガラリと玄関が開く音がした。
一瞬の出来事に驚きつつも腰を浮かせると、勢い良く今への襖が開け放たれた。

「たのもう!」
「うおっ!?た、辰馬?」
「銀時、ちっくと来るぜよ!」
「は!?つかだから銀時だって・・・って、あれ、あってる」

突然のことに状況を理解できていない銀時の腕を強引に掴むと、タイミングが良いのか悪いのか台所から茶を運んできた新八と視線が合う。

「眼鏡くん、ちっくと銀時借りてくぜよ」
「は、はぁ・・・」
「つかお前俺の許可は」
「行くぜよ!」
「おい!」

了承を得るや否や銀時の声も聞かずに万事屋を飛び出す。
文句を言いながら引きづられるようにして出て行く銀時を眺めながら、新八が静かにため息をついた。



+++



「ちょ、おい辰馬っ何処まで行くんだよ!」

少しだけ焦ったような声にはっと我に返って手を離す。
振り向くと不満そうな銀時と目が合い、気まずさを誤魔化すように笑って見せた。

「おお、すまんすまん。痛かったかぇ?」
「腕は大丈夫だけど・・・目的地くらい教えろよ」
「目的地」

言われてみてふむ、と唸ると銀時がまさかといった表情で詰め寄ってきた。

「お前、無いとか言うんじゃねぇだろうな?」
「あっはっは!銀時はまっこと勘が鋭いのう!そのまさかぜよ」

左手を頭の後ろに回してまいったとばかりに笑っていると、ふざけるなとばかりに殴られた。
ジンジンと傷む頭をさすりながら顔を上げるとジトリとした視線を投げつけられる。

「てめぇはいつもいつも・・・俺だって常に暇なわけじゃねぇんだぞコノヤロー」
「あだだだ・・・ひ、酷いぜよ銀時〜」
「酷いって誰がだ?お前がか?」
「夢を、」

ぐいっと襟首を掴まれたところでふっと表情を真剣なものへと変える。
それに潔く気づいた銀時がはっとしたように腕の力を緩めた。
苦しかった首元が解放され、喋りやすくなったところで口を開く。

「夢を見たんじゃ」
「夢・・・?」

銀時がピクリと表情を強張らせた。
それに少し違和感を感じながらも頷いて話を続ける。

「おお、公園でおんしと遊ぶ夢」
「ぶっなんだよそれ。もしかしてシーソーとかブランコとか言わねぇだろーな?」
「おお!?何で分かったがか?」
「えっ」

思わず出てしまった声に銀時が慌てて口を塞ぐ。
しまったと思ったときには既に遅く、その様子を坂本が訝しげに眺めた後、まさかと目を見開いた。

「・・・おんし、もしかして」
「いやいやいや、違うよ違う。たまたま、何となくそうかなーって思っただけだから」
「銀時」

先程とは違い、今度は確信めいた声音で名前を呼ぶ。
銀時は暫くの間居心地が悪そうに視線を彷徨わせた後、観念したように息を吐き出した。

「・・・・・・・・・あーもう、面倒くせぇなぁそうだよ、同じような夢俺も今日見たんだよ」
「ぎーんー」
「あああああもう鬱陶しいな!何なんだよっ!お前はっ!」
「わしな、今朝の夢が気にのうてちっくと調べてみたんじゃ。夢占いっちゅうんか?」

黙って続きを促すように視線をやると、坂本は嬉しそうに目を細める。

「したら、ブランコは焦りを意味しちゅうらしい。でもってシーソーは・・・」

そこまで言って勿体つけるように口ごもる坂本を不審に思い眉を寄せる。

「シーソーは・・・なんだよ」
「うん。大切な人と気持ちが通じ合っちゅうこと、らしいぜよ」
「なっ!」

途端全身の血が其処に集まるような感覚と共に、顔が赤くなっていくのを感じた。
思わず一旦俯いた後、しまったとばかりに顔を上げると案の定にやにやと意地の悪い笑みを浮べた坂本の顔。

「やっぱり、おんしも同じような夢を見ちょったがか!」
「ちょ、違っ」
「あっはっは!まぁ照れるな照れるな」
「照れてねぇえええええ!!!!!!」

笑いながらぎゅうぎゅう抱きしめてくる坂本を押し返すが、腕力で勝てたことは昔から一度も無く、今回も例外ではなかった。
せめてもの抵抗とばかりに顔を見られないようその胸板に押し付けてやれば、ふふっという笑い声と共に耳元に息がかかった。
それが少しばかりくすぐったくて身を捩る銀時を坂本が優しげな表情で見つめた後、ゆっくりと目蓋を下ろす。

「じゃが・・・・・・ちくとばかり安心したぜよ」
「・・・辰馬?」

強まった腕の力に名前を呼ぶ。肩越しに伝わってくる温もりが心地よくて瞳を細めると同時に坂本が口を開いた。

「こがなことでも、おんしのベクトルがわしに向いちゅうのが分かって、安心しちゅう」
「・・・何かと思えば、なーに不安がってんだよ」

ふうっと息をつきながら軽い口調でそう呟く。
その調子に驚いたのか、坂本の肩が少しだけピクリと跳ねるのが腕越しに伝わってきた。

「お前が地球を見下ろすように、俺だっていつも空見上げてんだ」
「銀時・・・」
「変な心配してる暇あるんだったら、てめぇんとこの部下の撒き方でも考えてろよ」

その方がずっと時間の有効活用だぜ?

続ける銀時の言葉に驚いたように目を開いた後、

「もっともじゃ」

驚くほど優しい声音で泣きそうな笑顔を浮べた。




もしも心が一つだったなら
こんな不安はなくなるのだろうか
(でも二つでよかった
だってこの温かさを感じることが
出来なくなってしまうから)





2009/11/1


<坂銀/いちゃつき&夢>
リクエストありがとうございました!


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