Gift&リク

□キリ番
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人一人分よりも少しだけ縮めて座る。

遠すぎず近すぎずのこの距離。何処かもどかしく、けれども居心地が良かった。




#誤魔化しアイの呼んだ恋(Sakamoto×Gintoki)





少しだけ肌寒い夜。
綺麗に晴れた空にはこれでもかというほどの星が瞬いている。
それをぼおっと眺めながら、隣の人物を盗み見た。
どうやら下で何かあったらしい。ぶつぶつと文句を呟くその姿はいつもより少しだけ不機嫌そうに見える。


「おんし飯はどうしたんじゃ」
「最近魚ばっかだろ?いい加減飽きたからとっとと食って出てきた」
「魚も美味いぜよ」
「美味いんだけど食い過ぎると飽きるんだよ」


贅沢者め、と笑うとそっちこそという返事が帰ってきて苦笑する。
こうやって二人きりの時間を常に欲している自分は、確かに贅沢者かもしれない。
ドクンドクンと左胸の鼓動が早まる。
これを聞かれてしまったらお終いだな、などとくだらないことを思いながら坂本は柔らかく笑った。





こうやって二人きりで居られる時間というのはとても貴重だった。
昼間は何かとつけて他の奴らが混ざってくるし、夜は夜でお互い疲れて寝てしまうことの方が多い。
なので、こうやって落ち着いて星を眺める機会など普段は滅多に無いのだ。
不思議なのは銀時が屋根に上がる時、必ず坂本もいるということ。
後々聞いたら彼は星が好きなのだという。
ならばここに来ればいつでも会えるのだろうかと思って通い始めたのはつい最近のことだ。


「いつも同じ位置に居て疲れないのかねぇ…」
「星がかえ?」
「俺なんかだったら絶対耐えられねぇな」
「あっはっは!金時は面白かことをいいよる!」
「金じゃなくて銀だっつの!!!!」


いつものように下らない話をしながら空が明らむ頃までこうやって二人でだらだらと過ごす。
起き上がりついでに頭の後ろに置いていた手を横に持ってきたら、人一人分より少しだけ近い距離が更に近くなって左胸がいつも以上に騒いだ。
自分がこんな気持ちになっていると知ったら彼はどんな反応を示すのだろう?
笑い飛ばすだろうか、それとも拒絶だろうか。
どちらにしろ、自分が望んだ答えはきっと得られないだろうと銀時は苦笑した。





ふと、銀時の手が横に降り距離が縮まった。
早かった鼓動が更にスピードを上げていくのが分かる。
少し手を伸ばせば触れられる距離なのに、その勇気が無い自分がもどかしくて悔しい。
途端、くしゅんと小さなくしゃみが聞こえてきた。隣を見ると銀時がずるりと鼻を啜っている。


「何じゃ、寒いんかえ?」
「や、へーき」


そう言いながら体を丸める。明らかに寒いという意思表示だ。


(まったく、素直じゃないのう)


「何がじゃまったく…ほれ」
「わっ」


自分の着ていた羽織りを上から被せてやる。
驚いたのか、わたわたと慌てている銀時を笑うと、むっとしたように睨まれた。
すまんすまんと手を上げて謝ると、ふんっと鼻息で返事をされる。


「・・・今度はお前が寒いんじゃねぇの」
「いんや?わしは別になんちゃーないぜよ・・・っくしゅ」
「うそつき」


今のは少し、恥ずかしかった。
くすくすと笑う銀時から視線を外すと軽く頬を掻いた。






「ほら、返すよ」
「いや、わしは平気じゃき、おんしが着ちょれ」
「いやいやいや俺も平気だから」
「おんし風邪引きやすいろー」
「う・・・でも元々はお前のだろうが」
「いいから、着ちょれ」


そう言って強引に被せると、銀時が不満気に唸った。
坂本は苦笑しながらもう一度空へと視線を移す。
しばらくの間そうしていると、銀時が思いついたように「あ」と声を上げた。


「そうだ、こうすりゃいいんだ」
「?どうかしたかえ?」
「いいから、ちょっと黙ってじっとしてろ」


そう言って立ち上がった銀時をしばし見ていると、、坂本のすぐ隣に腰を下ろした。
その後手に持っていた羽織を坂本の左肩と、自らの右肩に掛けなおす。


「これで平等だろ」
「ぎ、銀時」
「なんだよ」
「・・・」


なんだよ、というか、なんというか。

これはちょっと・・・いや、かなり近くないだろうか。
何も言えずに黙っていると、じわりと背中に暖かさを感じた。
ふと銀時をみると、彼にしても思い切った行動だったのかそっぽを向いてじっと黙っている。
ドクンドクンと心臓が波打つ音が聞こえてくる。
触れた部分から聞こえてしまわないかなどと、馬鹿なことを考えているのは自分だけなのだろうか。


「あの・・・」
「あのさ・・・」


妙な空気を断ち切るよう、思い切って口を開く。
ダブった声に思わず顔をあわせると、再びすいっと逸らす。
再び訪れた沈黙に、思わずため息をつく。
どうしてこう、いつも上手くいかないのだろうか。
口には出来ないことを口にしてみたいと思うのは、やはり贅沢なのだろうか。
柔らかな風が慰めるように頬を掠めていって、銀時は苦笑いをもらした。


(頑張れってか?)


それはそれで酷な話だ。

ズキズキと胸の痛みが悪化していく。



けれども、頑張らないと終わらないというのならば



銀時はぎゅっと拳を握り締めると、ふうっと息を吐く。
思い切って息を吸い込むと、隣で同じような音が聞こえてくる。
そんなことを気にする余裕も無く、勢いに任せて言葉をつむいだ。




「俺、お前のことが好きみたいなんだけどっ」
「銀、おんしのことが好きじゃ」





「「・・・・・・・・・え?」」







ばっと見合わせたお互いの顔は、思っているより赤かった。





痛みと勇気は紙一重

何と言うか
取り敢えずは、これからもよろしく?











...END




はまじさま、リクエストありがとうございました^^
遅くなってしまってすみません・・・!しかも遅い割にはな出来で申し訳ないorz
攘夷時代とか二人ともモゾモゾしてればいいと思います!何

はまじさまのみお持ち帰り可とさせていただきます。




2009/7/24






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