Gift&リク

□プレゼント
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「うえーまたかよー」

突如背後から聞こえてきた恨めしい声に振り返ると銀時の苦々しい表情が視界に入る。
何かと思って彼の手元を見てみればどうやら茶碗片手に、桂の手によって綺麗に取り分けられた手元のおかずにてこずっている様だ。
紫色の野菜を箸で摘んでは更に落としをひたすらに繰り返している。
そうこうしているうちに、箸を進めようとしない銀時を隣の桂が行儀が悪いとしかりつけてた。
高杉はというと完全に無視を決め込んだのか、黙々と食事を続けている。
松陽はその一連のやりとりを眺めて思わず微笑むと、ふと、ついこの間までの光景が頭をよぎった。
というのも彼がこうやって皆と共に食事をするようになったのは極々最近のことなのだ。
少し前までは一人ひっそりと食を繋いでいた様子であったし、それより前は食べてもいなかったようだ。
心配した松陽が桂や高杉に一緒に食事をとるよう頼んだ所、最近何とか茶碗に手を伸ばすようになった。
なったのだが、今度は好き嫌いが激しすぎる。全く困ったものだ。

「銀時!いい加減観念して口に運べ!」
「嫌だね。大体ナスなんか食った所でこれといって栄養もねぇし、何の役にもたたねぇだろうが」
「……そうなのか?」

先程までとは打って変わり、桂がキョトンとした表情を浮かべた。
高杉はというとちらりと桂に視線をやったあと、こちらをじっと見つめている。

(やれやれ、困りましたね)

銀時は長い間一人で荒野を巡って来たせいか、どの食べ物が生き抜く上で重要であり、栄養分の高いものかを体で覚えている。
初めこそその知識に仰天したものの、今では出かけ先で塾生皆が頼りにするほどまで有名になった。
その知識を勉学にも生かして欲しいものだが、そうは問屋がおろさないらしい。
食べ物に関しては一人前の銀時が言ったことだ、桂が目を白黒させるのも無理は無い。

「そんなことはありませんよ、ナスにもちゃんと栄養はあります」

松陽の言葉に桂がホッとしたように息を吐いた。
気にいらないとばかりに眉を寄せる銀時に微笑むと、ふと浮かんだことを言葉にしてみることにした。

「銀時」
「な、なんだよ」
「お前は毒キノコを食べたことがありますか?」
「……ある、けど。本当に危機の時だけだぞ」
「ふふ、毒キノコでもナスと一緒に料理すれば中毒は起きないんですよ」
「マジでか!」

その一言に感銘を受けたように銀時が瞳を輝かせた。
先程までの文句は何処へやら次々とナスを口へ運ぶ銀時に、高杉が思い切り呆れたような顔をした。

「ご馳走様でした」
「はい、お粗末さまでした」
「・・・・・・・・なぁ、先生」

潔く食器を片付けて高杉がゆっくりと近づいてくる。
その用件にうすうす気がつきながらも首を傾げると、少しだけ躊躇するように一言。

「あれって、迷信なんじゃ・・・」
「しぃーっ」

やっぱり。
人差し指を唇に当てて悪戯そうに笑う己の師に自身の言葉の真を確かめると思わず苦笑する。
後ろでは珍しく己の食事にがっつく銀時と、感心した様子の桂。
隣で楽しそうに笑う師の姿にふわりと心を包まれた気がした。






***





――カラン
食器が床に転がす音と共に、不満げな声が上がる。

「銀ちゃん、私ナス嫌いヨ、食べたくないネ」
「銀さん・・・僕もあまり好きじゃないんですけど・・・つかなんで今日こんなナス料理」

目の前の食卓に唇を尖らせる神楽に顔が少々青ざめてる新八の姿。
それらに嘗ての自分を見ているようで、吹き出しそうになるのを何とか堪える。

「いいだろ、ナスだって栄養あるんだ、好き嫌い言わずに食べる」
「うえー」

眉をハの字に下げてナスを摘みあげる神楽に苦笑すると、そういえばと口を開く。

「そういや、毒キノコはナスと一緒に料理すりゃ中毒が起きねぇらしいぞ」
「マジでか!!!!」

銀時の言葉を聞くや否や神楽の目つきが変わった。
バクバクとナスを口に運んでいく神楽を、新八が半ば呆然と眺めている。
その様子にいよいよ可笑しくなって笑っていると、我に返った新八が一瞬眼を見開いた後、はぁとため息をついた。

「銀さん、それ、迷信ですよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・え、マジでか」
「マジです。一緒に食べても毒が回る時は回りますよ」

僕も昔姉上に同じ事言われて食べさせられた思い出があります。
新八の言葉に神楽が「なんだ」とガッカリしたように箸を置いた。

(あんにゃろ・・・)

このまま信じたままだったらどうなっていたことやら。
嘗て自分にこの知識を刷り込んだ恩師を思い出してため息をつく。
しかし、まるで勝ち脱げされたような展開にムカついているはずなのに、どうにも口元はにやにやと笑みを浮べてしまう。

(いつかぜってー抜かしてやるからな)

いつも一つ前を進んでいた彼の前に回りこんでべぇっと舌を出してやる。
追いつかなかった背中に追いついて、今度はぼすっと叩いてやる。
守られてばかりのあの頃とは違い、今度は自分が守る立場に居る今ならばきっと。

「っくそー見てろよー」

叫びながらソファに沈み込んだ銀時を子供達が訝しげな表情で眺めた。




親の意見と茄子の花は
千に一つも無駄がないというけれど
あんたのそれは世間で言えば無駄だらけで
だからこそ、大好きだったよ



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壱さんお誕生日おめでとうございますvということで、いつもお世話になりっぱなしの壱さんに勝手に捧げます(迷惑)
というか過ぎまくりですよねっ20日って・・・二倍って自分・・・orz
こんなものでよければ煮るなり焼くなり好きにしてくださいっ!!


2009/10/20

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